07
今日は小さな茶色の猫と、黒い大型犬が一緒にいる。小さな猫は膝の上、大きな犬はエレンを腹で囲むように横に寝ている。
エレンは二匹の頭を撫でたり、棒切れを投げたり動かない代わりに暇を潰す。二匹は雄でよくこうしてエレンの元に遊びにくる常連だ。
「今日もあの人は来ないかな…」
『エレンは何時まで待つんだい?』
エレンの空に掛けた独り言は宙に舞って消えるかと思いきや、膝の上にのる茶色の猫に問い掛けられる。エレンは元は狐、いや今も人の形をとる狐ではあるが。そのため、大体の動物の言葉は理解ができる。
「何時まで…来るまで…かな」
『来なかったら?』
大きな犬は考え誤魔化すエレンに、一番聞かれたく無いことを聞かれる。エレンは顔に影を落とし、口ごもる。
「そうだね…来ないかも……しれない」
『なら、何で待つの?』
「何で…考えた事もない…」
『変なの』
「…変だな…何でオレ待ってんだ」
「待てと言われたからだろ?」
「…!」
猫と犬が一緒にいて、会話をしていたのは事実。だけど目の前に誰かがいた記憶はない。それに周りを見渡すが、声の主は見当たらない。鼻を使い、探しあとようと上を向くと赤い鳥居に黒い影があった。
気が付きよく見ようと上体を後へ傾けると、それは上から降ってきた。あまりの出来事にあたふたしていると、それは自分の頭スレスレに着地し顔を覗きこんでくる。
「まだいたのか」
「…!ビックリするじゃないですか!!」
「…」
エレンは早鐘をならす鼓動を落ち着かせようと深く深呼吸をする。あれ、と見上げれば半不機嫌なリヴァイで。
「リ、リヴァイさん…何かようですか?」
「…何故そんなに待つんだ?」
「あ…えっと、えー」
いきなりの質問、意味がなかなか理解できず、あーうー言っているとリヴァイの顔はさらに不機嫌になっていく。
「あう…」
「何故そんなに待つんだ」
リヴァイはエレンの隣に座り、ため息混じりに回答をまつ。エレンはやっと落ち着き話をする。
「何故…自分でも解りません。顔も名前も知らない、ただ偶然来て、オレの命を救ってくださって…また来てくれると言いました。もしかしたら、ただの戯言だったかもしれません。けど、待っていたいんです。」
「そうか…」
「オレも本当にわからないんです。ただ、あの時の事が頭から抜けなくて…会ってもきっとお礼しか言えないですけど」
エレンは空を見上げ、楽しそうに話を進める。命を助けられた事よりも、その助けてくれた人を思い出すのが嬉しいようだ。
「…エレン、そいつに惚れたのか?」
「ほ、惚れ…た?」
「ああ」
「…そんなこと無いですよ!だってオレ男ですし…えー…惚れたって…えー…えー……?」
「大丈夫か?」
エレンはリヴァイの一言にまたもや驚きあたふたする。まるで図星されたような反応である。
「解らないです…だって、一度しか会ったこと無いですから…」
「なら、二度目会ったらわかるのか?」
「…多分」
「そうか、またな」
リヴァイはエレンの話を聞くとまた昨日ように立ち去ろうてする。だが、エレンが彼の裾を引っ張る。
「…なんだ」
「あの…鬼って皆…赤い目をしてるんですか…」
エレンは少しでもあの人の事を聞きたくてリヴァイを引き留める。
「さぁ、俺は見たことながないな」
「…そうですか」
エレンの予測は確信に変わり、膝の上にいた猫と隣にいた犬はいつの間にか居なくなっていた。
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