[携帯モード] [URL送信]

破壊の因子
意外な実力?
結局ケイリはハイラル城下町の外に出た。

「うわ〜」

青い空に白い雲。
ありきたりの表現だが、その光景にケイリは歓声を上げた。

「いい?くれぐれも魔物のは気をつけてよ?……ってあれ?」

隣を歩いていたはずのケイリがいない。
慌てて後ろを見ると、ケイリは屈みこんでいた。

「ケイリ!?」
「すごいよ、ホラ。ローズマリーが咲いてる!あっちにはラベンダー!」

薬草を見て喜び、収穫している。

「………」

リンクは無言で頭を抱えた。

「おいおい……」

とにかくリンクはさっさとケイリを城下町に連れ戻す気でいた。
ケイリを放っておくと魔物に襲われてあっさり死んでしまいそうだ。

「あまりはしゃぐなよ」

気分は園児の引率をしている保父、といったところか。

「あっ!あっちにも……!」

ふらふらとケイリが歩いていく。

「お、おい!」

慌ててケイリが追いかける。

その足元から何かが現れた。

「なっ!?」

デグババだ。
本来森にしか生息しないでグババがハイラル平原にいる。

不意を突かれたがリンクはすぐさま剣を抜き、デグババの茎を斬った。

「ケイリ!?」
「うわ〜っ!」

見ればケイリもデグババ、しかも3体に襲われている。

「しまった!」

ケイリとは距離が離れている。
とても間に合わない。

「くそっ!」

それでもリンクは走った。

ケイリはとっさに顔を庇い腰の物を手にして投げた。
それは悪あがきのようなもの。

だが。


ザシュッ!


ケイリが投げたのは腰に下げているナイフ。
それが3体のデグババの頭部に刺さっている。

「うわぁ〜っ!」

さらにケイリは2本のナイフを抜いて両手に持ち、茎を切り裂く。

その出来事にリンクは呆然とした。

全ての一連の出来事が流れるように滑らかで、素人の動きとは思えない。

「あ、あれ……?」

目を開けたケイリは消滅したデグババを見て呆然する。

「ケイリ、強かったんだ……」

はっとしてリンクはケイリに駆け寄る。

「あ、リンク……。怖かったよ〜」

ケイリはデグババが消滅したことにより落ちた3本のナイフを拾い上げ、胸を撫で下ろした。

「……ケイリ、そのナイフ捌き……」
「ああこれ?おじさんに教わったんだ」

にっこりと笑うケイリに、リンクはなぜか寒いものを感じた。

ふとケイリはリンクの後ろを見た。

「あ」
「あ」

リンクもつられて振り向く。
そこには2体のボコブリンが。

「……豚?」
「いや魔物だから!豚だけど魔物だから!」

ケイリは俯いた。
怖いのかと思い、リンクはケイリを背後に庇う。

「……相手は豚。相手は豚。相手は豚」

初めは幻聴かと思った。

だが間違いなくケイリの声。

「……ケイリ?」

敵の目の前で注意を逸らすなど言語道断だが、思わずリンクはケイリを見てしまった。

「相手は豚。豚は食材。食材は斬らなきゃ」

シャキーン、という音が聞こえたような気がした。
ケイリはナイフを両手に構え、リンクの前に出る。

「ケ、ケイリ……?」

リンクが止める間もなく、ケイリはボコブリンに向かってナイフを振るった。







余談。

「あれ?豚肉は?」
「ケイリ、魔物は倒したら消えるから」
「そうなの!?せっかく豚肉で美味しい料理が出来ると思ったのに……」

たとえあっても魔物の肉は食べたくない。




[*前へ][次へ#]

6/51ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!