破壊の因子
旅は道連れ?
ゼルダが朝起きると、枕元に5つの珠が転がっていた。
それは夢ではない証。
「……でもよかったのかしら」
賢者の間でサリアは呟いた。
「まだ迷っているのか、サリア」
「今は、信じるしかあるまい」
「だって……!」
サリアは叫びかけ、はっとして我を取り戻す。
「……気持ちは分かるけどよ、今はそれしか手がねぇだろう」
「ワラワとて気持ちは同じじゃ」
「我々に今力はない……。口惜しい」
「利用できるなら利用するまでだろ?」
ラウルはずっと難しい顔をしている。
「……信用しすぎないことだ。利用されるか利用するか、ギリギリの線を見極めなければならない」
全てはハイラルのために。
リンクは目の前に差し出された物を見て顔を引きつらせた。
「ゼルダ……これは?」
「服です」
宝珠と共に差し出されたのは緑色の服。
「かの風の勇者が着ていたものと同じデザインです。私が護りの加護を与えたので、そこら辺の鎧よりも丈夫ですよ」
なぜかゼルダから無言の圧力を感じた。
どうやらこれを着て使命を果たせとのことらしい。
だが、デザインはなんとかならないのだろうか。
リンクは覚悟を決めて、服を受け取った。
「……本来なら私も行きたいのですが……」
「分かってる」
子供の頃から剣術を嗜んでいるゼルダはそこら辺の人よりかは強い。
だが、ゼルダはハイラル城の地下で祈りを捧げ、ハイラルを守らなければならない。
「お気をつけて」
ゼルダが手を組んで、祈りを捧げた。
城を出て城下町に来ると、肌寒さを感じてリンクは二の腕をさすった。
「ん?……寒い?」
ハイラルにはホロドラムほどはっきりとした四季はない。
だが夏は暑いし冬は寒くもなる。
今の時期、ここまで寒くなるとことはないのだ。
リンクはこの長袖の緑衣が長袖であることに感謝した。
「あ、おはよーリンク」
リンクの背中を叩いたのはケイリだった。
「ケイリ、どうしたんだ?」
「今日ね、店の定休日なんだ。だからハイラル平原を見て回ろうと思って」
「1人で?」
リンクは驚いた。
最近おかしいせいか、魔物が活発化している。
1人で城下町を出るのは無謀だ。
「危ないぞ」
「大丈夫大丈夫」
どこからそんな自信が湧いてくるのか。
「リンクはどこ行くの?」
「あー……」
家の言い伝えにある神殿のある場所。
森、火山、湖、火山の麓、そして砂漠。
昔のハイラルと地理は違うはずだが、幸いにもそれに該当する場所がある。
だから当面の目標はそれらを回ることだった。
言葉を濁して答えないリンクに、ケイリはすまなそうな顔をした。
「そっか、リンクにも言えないことの1つや2つはあるよね。ゴメン、無神経に聞いちゃった」
「ちょい待て。なにを勘違いしてる」
リンクは思わずケイリの肩をがしっと掴んだ。
「え?僕勘違いしてるの?」
「思い切りしてる。……とにかく、危ないからやめろって」
だがケイリは首を傾げる。
「ま、いいじゃん」
「よくないって」
そんな話をしている間にハイラル城下町を出る門が近づいてきてしまった。
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