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破壊の因子
それは大切な誓いへ
幸い建物や人に被害はなかった。
慣れとは恐ろしいもので、地震が起こり始めた当初はよくパニックに陥っていたハイラルの人達だが、今では普通に生活できるようになっている。



ハイラルの王女であるゼルダは優雅にお茶を飲んでいた。

「まぁ、それは大変でしたね」
「まったくですよ」

ゼルダの私室に招かれたリンクも紅茶を口元に運ぶ。
相変わらずいいお茶葉を使っていて、香りもいい。

「ただ、地震のせいで壷などの装飾品が置けないのは困りましたわ」
「そりゃ、危ないからな……」

ゼルダはカップをソーサーに置き、真っ直ぐとリンクを見つめる。

「……な、なに?」

顔が赤くなるのをリンクは感じた。

「実は、昨日夢を見ました」

慌てて真面目な顔を取り繕うリンク。

代々ハイラルの女性には夢で未来を占う力が宿る。
それは大抵ハイラルの命運を握るものだ。

「ハイラルの地が砂になっていました。それも長い年月をかけて、ではなく一瞬で砂漠になってしまったのです」
「一瞬で……?」
「はい、光が走ったかと思うとすぐでした。人々は死に絶え、建物は崩壊し……木の1本さえ残っていないありさまです」
「そんな……」

もしそんな事が現実に起これば……。

「お父様にすぐにお話しました。ですが……対応はどうしても限られてしまいます」

ハイラル王も娘の力のことは知っている。
だから早急に対応しようとしたのだが、全てが砂になるのなら手の施しようがない。
ハイラルの民全員を避難させようとしても、まずは避難先を決めなければいけないのだ。

「じゃあ、どうすれば……」

話しているあいだに顔を伏せたゼルダだが、やがてキッとリンクを見つめる。

「リンク、私はあなたに希望を抱いています」
「え?」
「あなたのご先祖様は風の勇者です。この状況を打開するにはあなたの力が必要だと、私は確信しています」
「………」

リンクは俯いた。

「……オレにそんな力はないよ。ただご先祖様が風の勇者ってだけで」
「そんなことありませんわ。あなたは強くなろうとして、特訓を重ねているではありませんの」

ゼルダは席を立ち、リンクの手を握った。

「誰も、最初から強い者はいません。風の勇者様だって、初めは妹を連れ去られたり魔王に負けたりしてますもの。でも勝てたのは周りの協力があってのことだと聞いております。あなたにも、協力者はいますわ」
「ゼルダ……」

互いに見つめ合う2人。

「……そうだね。オレもハイラルが消えて皆が死ぬのは困る。出来る限りのことはするよ」


それに、目の前の人をむざむざと死なせるわけにはいかないのだ。













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あきゅろす。
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