破壊の因子
初めまして
いつもの通り、平和なハイラル。
リンクは今年17歳。
祖先は500年ほど前に活躍した風の勇者であり、現ハイラル王族の遠縁でもある。
そしてハイラルの姫であるゼルダとは幼馴染という間柄だ。
騎士としてハイラル王に仕える身、いかなる時でも心身共に強くあらねばならない。
そして若いとはいえ立派な騎士、任務も当然ある。
いくら実力があるとしてもまだまだ若いリンクに重大な任務があるわけではなく、先輩の騎士と共にハイラル城下町の見回りという退屈な任務だった。
とはいえ見回りという仕事が退屈なのは何事もない証拠。
退屈なのはいいことだと分かりつつも実力を試したいリンクとしては、少々複雑な気分だった。
だからといって……。
「……平和だなぁ、うん」
思わず現実逃避したくなった。
「じゃ、じゃあオレはあっち行くからよ」
「ま、待ってくださいよ!」
そそくさと立ち去ってしまう先輩騎士を引きとめようとして、失敗した。
残されたリンクは立ち尽くすわけにもいかず、足元のそれに目を落とした。
それ……倒れている青年に。
町の人に呼ばれて来てみれば、いるのは行き倒れているらしい青年。
「どうしろっていうんだよ……」
だが放っておくわけにもいかず、リンクはひとまず青年を休ませる場所を確保しにいくのだった。
その青年が目を覚ましたのは、近くの宿屋に寝かせてしばらくしてからだった。
「う、ん……」
青年は何度も目をしばたかせ、起き上がった。
「あれ……?ここ、どこ……?」
「あ、起きた?」
リンクは椅子から立ち上がった。
青年は青の瞳にリンクよりもくすんている金色の髪。クセッ毛らしくはねている。
青いシャツの上に深緑のベストを着て、腰に青い布らしきものを巻いている。
「ここはハイラル城下町、あんた行き倒れてたんだよ」
「そ、そうなんだ……。助けてくれてありがとうございます。……あれ?」
青年は腰をまさぐり、不安そうな顔つきになる。
「あの……僕の、荷物は……?」
「ああ、これ?」
リンクは机の上を示した。
「ナイフを沢山もってるってことは料理人?」
「はい!そうなんです!得意料理は竜田揚げです!」
なぜか意気込む青年。
机の上には果物ナイフのようなものだけではなく、本格的な包丁が置かれていた。
しかも1本や2本ではなく5、6本だ。
「とりあえず調書を取る必要はあるから2、3質問するけど……。まず名前は?」
「ちょ、調書!?僕、何か悪い事しました!?」
とたんに青年は青ざめた。
「したの?」
「し、してません!」
「……これは君が倒れてた経緯を知るためのものだから」
リンクは溜め息をついた。
「そ、そうなんですか……」
「んで、名前は?」
「あ、僕……ケイリっていいます」
青年……ケイリは微笑んだ。
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