おお振り文
魔法の言葉(阿三)


暗い帰り道。

前を歩く阿部君。

オレは距離をなるべく広げないよう着いてくだけ。


「今日も練習疲れたな」
「う、うんっ、でも」
「?」
「た、楽しいっ」
「‥オレも。」

阿部君が振り向いて笑った。

笑顔なんて珍しいな
機嫌がいいのかな?

「帰ったらゆっくり休めよ?」
「う、うんっ」
「そんでよく寝ろ」
「うんっ」

阿部君、保護者みたい。
恋人なのに。
でもそこも好き。

顔を上げれば阿部君の背中。

この背中も好き。
頼れて安心する。

「‥三橋?」
「う、なにっ?」
「何でさっきから後ろ歩いてんだ?横来いよ」
「う、うんっ」

タッと足を速めて、
阿部君の隣に。

街灯の光で出来る影が近づく。

「あ、阿部君っ」
「なに?」
「…‥‥」

“好き”だと伝えたいのに
なかなか出ない。

好きな人に好きと伝えるのは
なんて難しいんだろう。

「どうした?」
「わっ‥!」

阿部君に顔を覗き込まれた。
オレは心臓ばくばく。

「‥あ、のね」
「うん」
「す、…‥き」

精一杯の勇気を出して
思いの丈を口にした。

すると阿部君は少し驚いた顔をしたけど、すぐにニッと笑って額にキスしてくれた。

「オレも好きだよ」

阿部君の一言が
オレの世界を変える。

阿部君が言うことは
なんだって信じれるんだ。

「今日の三橋、やけに素直」
「そ、そう‥かな?」
「うん、嬉しいけど」





阿部君が放つ魔法の言葉。
世界の色が変わってしまった。

オレは魔法にかかってしまった。






―END―







*あとがき*
阿部君の言葉が三橋君にどれだけ影響を及ぼしてるのかという話です。
駄文失礼致します。

阿部君の一言一言が、三橋君にとっては大きいんです。


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あきゅろす。
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