第五章 番外編「男は闇を弄る」
「その獲物、俺が貰っていいよな?」

男がそう言うと、激しい耳なりと共に幾多もの槍が一直線に降り注いだ。
しかし、普通なら―槍が降る時点で普通ではないが―全身を貫く筈の槍は男三人の体を貫くことは無かった。
無かったが、その恐怖故か三人はそのまま気絶したようだ。

「どうした? 死ぬ気で掛かってくれば、或いは勝てるかも知れないぞ?」

男は降り注いだ槍で失神した男達には目もくれずに、わたしに答えを要求する。
答えは…

「…判らないけど、こんな所で死にたくはない…っ!」

そう叫びながら闇に手を入れる。
すぐさま手にした二本のクナイを頭と心臓に向かって投げつけ、腹を槍で横凪にした。

男はそれに対して、空間に浮かび上がらせた剣でクナイを弾き、そのまま槍を断ち切った。

「はっ。これ程の弱き者がよく今まで生きて来れたものだ。」

構わず切り取られた槍の鋭利な部分で男の心臓を狙う。
それは心臓に届く事はなく男の拳に掴み取られ、奪い取る反動で腹を蹴飛ばされた。

そのまま、わたしは廃屋の壁に打ち付けられた。

「ぐっ…!」

続けて男はナイフのような物を四本投げつけた。
それが手の平と足の甲を貫いて、壁に刺さってわたしは昆虫の貼り付けのようになった。

ナイフに刺された箇所は痛みも出血もないが、そこから魔力が抜き取られていく様な感じがした。

「な、なにこ…ひっ!」

ゆっくりと近寄って来た男は、目にも止まらぬ速さで貼り付けになったわたしの首筋に矛先をあてがった。
それが下に振り下ろされる。

「っ…!」

だが、体を両断したかと思われた槍は、肌や内臓に一切傷を付けずに服とさらしだけを引き裂いた。
一瞬で下腹部と腕以外の肌の殆どが露わになり、驚きのあまり声もでない。
死んだと思い込んだ脳による信号により、上は涙で頬を濡らし、下は黄色い尿が下着を濡らす。

「汚いぞ女。
 今更何を驚くのか。さっき見ていた筈だろう?
 こいつが人間を貫くザマを。」

男が槍を突き刺して、内臓を抉るフリをする。
いや、実際にそれが本当に実態を持った刃物なら内臓が抉るフリにもならないのだが。

肉を貫かれた異物感はするものの、痛みや出血は伴わない不思議な武器…
わたしのそれに対する反応が鈍くなったので、男は飽きたのかそれを下腹部にあてがった。

「い、や…やめて…。」

両手両足から吸い出される魔力のせいか、思うように声を張り出せなかった。
体内の魔力が失われるに連れて脱力感と疲労感が伴うが、枯渇してしまうとどうなるかなんて想像したくもない。

「もっと太いモノを加えたいか?
 こんな夜中に男遊びに出歩く君のアソコは、この様な細い槍ではお気に召さないかな?」

見たことも無いので知らないが、その槍で細いと言うのなら、男のモノはわたしの腕よりも太いと言うことだろうか。
いくら殺傷性が無いと言っても、そんなモノが穴に入れば間違いなく股が裂けてしまう。

「いや、嫌だ!! そんなの入れないで…っ 入る訳ない…入る訳ないよ…!」

僅かに動く太股を閉じようとするが、固定されているせいか其処まで届かない。
男は片手で大陰部を割開き、槍の持ち手側をあてがった。
処女は愚か濡れてもいない秘部にそれが入れば、裂けて生殖器として使い物にならなくなるに違いない。

「ほう、入るわけ無いのか。ではお前の汚らわしい雌穴に、これが入るか入らないか試してやろう。」

そう言って男は槍に力を一気に込めた。
下腹部に力を込めて入らないように耐えることが出来たのは、数秒間だけだった。
今まで血塗られる事が無かった槍に血が滴った。

「っ…ギャアアアアアアア! イダイいたいイダイイダイイダイイイイ! ヌイテエェェ! お願いします! 抜いて、抜いてください!」

それは抜かれる事はなく、処女膜を突き破り、膣の内部を深く抉り、子宮の壁を強く殴打して止まった。
うなだれると下腹から槍が突き出た自分の生殖器が見える。こんな痛々しい姿の人間を自分とは認めたくなかった。

「う…ぅあ…。痛゛い…。…抜いて……ぐださ゛い。」

必死に痛みを訴え許しを乞うが、男は聞こえないのか埋没した槍を捻って膣を破壊しようとする。
いや、子宮まで挿入し破壊しようと企んでいる。

「入るじゃないか?
 しかしまあここまでは、流石は男遊びの多い御嬢様と言った所かな?
 この棒が君の子宮に入っても君が壊れなければ君の言う通りにしてやろう。」

入ればな。と男は言い、更に力を込めた。
これ以上は本当に女性としての希望や未来を失い兼ねないが、既に抵抗する力も余裕も無かった。
力無くうなだれ、事を受け止めるしか術はない。

「あ゛あああ…いぎっ!?」

程なくして、小さな子宮口を破壊して子宮の頭を圧迫する感覚がした。
抉れた生殖器からは更に血が溢れ出した。
秘部から流れ落ちた血液は、両脚を伝って地面に血溜まりを形成するほどとなっている。

子宮に達したのを確認した男は、そのまま約束通りに槍を引き抜いた。

「ひぃ…ちぎれ…っ!」

一気に。

ズゴッともガリッとも言える、何とも言い難い音が鳴った。

「あ゛ああ゛あ゛あああ゛あああああああああああああああ゛あ゛ああああああああああ!!!!!」

実際には有り得ないが、子宮を膣事外側に引きずり出されるような痛みと衝撃でわたしの頭はフェードアウトした。

次に起きたとき、わたしは全裸で、口や全身から苦味と粘り気のある白色の液を垂れ流ていた。
感覚のない下腹部を見ると、ありとあらゆる異物が白色の液を潤滑にして詰め込まれている。
何があったか想像する前に、わたしは首筋を辺りに散乱していた硝子の破片で断ち切った。

―――――――――――――

読み終わり、カウンターに置かれたボトルを一気に煽った。
少ししか残っていなかったが、やけに不味い酒に感じられる。

「マスター。あんたの趣味は計り知れないが、彼女が帰ってきた時の怒りはそれ以上に計り知れないぞ…。」

あれだけ二人に滅多撃ちに遭ったと言うのに、彼の後悔のない頭も演技力もほとほと呆れた物だ。
未だにMなのかSなのか判らないのはこの為かと思える程だ。

「まあまあ、人生やっぱり減り張りとwktkが無いと生きていけないでしょう。
 暇になるより毎日構って貰った方が飽きないしね。」

笑いながら語る顔も、次の瞬間現れた来客者を見ると、一瞬で青くなった。
正確には彼女の妹が、娘二人を連れて来ただけだが、マスターにはそれがセラに見えたようだった。

「やあ、おはよう。
 朝に来るとは珍しいな。
 とはいえ!此処で会うのは前回の姉妹戦争以来だから10年程か?」

本当に似ていると入り口に立つ三人を見て思う。
端から見たら姉妹にしか見えないが、れっきとした親子なのだから不思議だ。

28歳となっても相変わらず嫁は幼い顔立ちで、自分が産ませた娘二人も妻に瓜二つとは、さぞかし父親も可哀想な事だろう。

「ええ、お陰様で今は大臣の息子であるトサニと結婚し…と、紹介がまだでしたね。
 私の娘のティレアとリフィアです。ほら二人共。」

元気な姉と、少し大人しい妹といった感じは、10年前の姉妹を見ているようだ。
少し恥ずかしがりながらも挨拶をした二人に、俺を含めてマスターも紹介した。

「俺は玄武。本名は…まあ、ここでは伏せておく。知りたければ、今は居ないが君たちの叔母様に聞いてくれ。
 で、其処にいる変態がマスターだ。名前はマスターではないが、まあ、こんな変態の名前など覚える必要なんてないだろうから伏せておく。知りたくなったら彼の妻に聞くといい。
 街の広場で屋台を営んでる"お姉さん"が彼の妻だ。」

子供はいたずらっ子で有名だが、奥さんは美しさと料理では世界一と噂だ。
マスターの変態さ故に未だに許して貰えず、年末か祭りの日しか会っていないらしい。
何もなければいい夫婦なので、是非ともその二回だけしか会わないで頂きたいものだ。

「――で、さっきの"前回の姉妹戦争以来"とはどういうことですか?」

口を滑らせてしまったか、痛い所を点かれてしまった。
マスターは知らぬ顔で、オレンジジュースを三本カウンターに置いているが、普通の仕草が逆に怪しい。
二人をカウンターに座らせて、俺の隣に座った妹君―シェアナ―が話を聞こうと寄り添って来る。

「いや、特にこれと言って深い意味は…。ああ、そうだこの本を君にあげよう。
 本が好きなシェアナにマスターからのプレゼントだ。」

と、さっきの本を渡す。
マスターは…明後日の方向を向いてグラスを磨いている。

後で読ませて頂きますね。と微笑み礼を言う彼女に本当の事なんて言える訳がない。
尤も、ネタはセラしか知らないから大丈夫だろう。



それから一年後の感謝祭に第二次姉妹戦争が行われた。

―――――――――――番外編終わり

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あきゅろす。
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