魔法とお爺さん
わたしは一人っ子として育った。
別にそれが嫌だったわけではなく、街の外れで1人の"若い"魔法使いと2人で呆れるぐらい平和な毎日を過ごして育った。

今はもう誰の記憶にも残っては居ないが、数年に一度開かれる街の祭りは産まれてから一度も欠かさず見てきた。

いつも平和過ぎる生活ばかり過ごしていたわたしにとって、それはいつも待ち遠しくて、祭りが近くなると彼が呆れるぐらいはしゃいだ記憶がある。

ある日、彼が始めてわたしの前で魔法使いらしいことをやって見せた。
いつも彼は"魔法なんてない方がいいんだ"と口癖のように言っていたので、その時わたしは本当に驚いた。

そして、彼の口癖に始めて同意した。



ある雨の日の事。

何も変わらない日常の中で、祭り以外の楽しみが雨の日ぐらいだったわたしは、久しぶりに外を出歩いていた。

同時の小屋の周りは木々が鬱蒼と茂っており、雨の日は木陰で雨宿りしながら林を探検するのが一番の楽しみだった。

しかし、その日は朝から魔法使いの彼は外出しておりあまり外に出る気ではなかったが、彼を見つけて驚かしてやろうと言う事を考え付いて思い切って外に出た。

外に出たわたしは、いつもの用に木陰から木陰へ渡り歩き、小屋と街の間程の場所で彼を見つけた。

直ぐに声をかけたかったが、彼は何やら真剣な顔付きで誰かと会話しており、タイミングを失ったわたしは遠くの木からそれを眺めて待っていた。

暫くすると、彼の声ではない誰かは叫び声を上げて突然燃え上がった。
すると、いつからそこにいたのか彼の周りの木々から、燃え上がった人間と同じ服装の人間が複数現れた。

彼等は一斉に攻撃を仕掛けたが、魔法使いの彼の影から射出された武器に悉くその攻撃を封じ込められ、始めの男と同じ運命を辿っていった。
それを無表情で行う彼の姿を目の当たりにしたとき、わたしは恐ろしくてその場所から一切逃げ出すことができなかった。

暫くすると、彼は全滅した男達をその場に埋めて家に帰って行った。
その日から私は彼の居ない日は外へ出ない事にした。


故に彼が居なくなってから彼女が小屋に訪れるまでの数年間、私は外に一切出なかった。

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