にい
二人が共同作業を行っている場所に向かって、弾を一発撃ち込んだ。
そう遠くは無い場所からの射撃だが、二人が悲鳴を上げて逃げ出すのを見越しての行為なのでバレはしない。

元の持ち主からは、南部なんたらとか言う東方の国の人間が作ったライフルと聞いた。
少し自分には長すぎるが、性能に問題はないので深く愛用している。

普段なら頭を撃ち抜くか、胸を貫くかしている筈の弾は二人の貼った紙に着弾した。
わたしは彼らに対しては、無言の脅迫を行うしか出来ないのだ。

何年前のことだろうか

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わたしは元々とある家柄のお家に産まれた。
産まれた時から漫画やドラマに有るような英才教育が施され、毎日遊ぶ暇もなく勉強だけを強要されていた。
当たり前の様に小学校から中学校までTOPで卒業し、高校に入学したある時気付いた。

同級生達を見て、気付いてはいけない事にわたしは気付いてしまった。

わたしの周りには声を掛けてくれる友人も、誉めてくれる親も、教えてくれる先生も居なくなってしまった事に。
わたしはその瞬間、今までやって来た事に対するネガティブな思考で埋め尽くされた。

自分は一体何をしているのか?

自分はこんな日常が楽しいのか?

自分は笑った事があったか?

感情など持ち合わせて居ないかの様な顔で、まるで計算された機械の様に白紙を黒に染める日常。
何が楽しくて、何に欲望を求めて、どこで自分が生きているのか。

そんな感情を消し止める事が出来ずに、わたしは家から逃げ出した。
思えば、あれが初めて自分で考えて行った行動だった。

……………。

逃げ出してから数ヶ月、わたしはボロボロで世界を這いずり回った。
何を食べても心が満たされず、どこに居ても落ち着かない。
わたしはわたしの心の居場所を探して這いずり回った。

ある時"何もかも自由な都市"の存在を知ったわたしは、迷わず其処に向かった。

『それならここからずっと南の方だが、大丈夫かい。君?』

と、少し小太りのおじさんから道を聞きながら、たどり着いた。

しかし、その都市は自由だった。

『ゲヘヘ…今日は良い日だ。なあ、兄弟?』

想像した自由とは遥かにかけ離れたそれは、無法地帯に他ならない腐った場所だった。
あれでも高校まで通った身だったから、甘い自由など無いと理解していたつもりだった。

わたしはその日、彼らから逃げ回った。
どこに行けども、その都市では助けてくれるような人道的な人間はおらず、道徳に反した行為や人の道を踏み外した輩ばかりだ。

気が付けば狭い場所に誘い出され、2人程だった追っ手も10倍以上になっていた。

『おやおや、逃げ場が無くなったね。』

わたしは都市を呪った。
そして、こんな場所に来た自分を呪った。

目の前には余り見た目が宜しくないが、逞しい体付きの男達。
わたしは何の武器もなく、ボロボロの服を纏った只のひ弱な少女。

『さて、始めようか。久しぶりのお客さんだ。
 思う存分楽しんで貰わなくっちゃあ!』

わたしとそんなに年が変わらないであろう男に、わたしは抱き上げられた。

あろうことかお姫様抱っこだ。

ああ、わたしはこれからこの男達に犯された後、捻り殺されるのだろう。
これは、勝手な考えで親元を離れたわたしへの罰なのだと思って全てを諦めた。

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