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不本意ながらも縛られた状況は打破できず、頬を膨らませたまま道順の分からない城内を歩き回られた。

気にしていないのは後ろを歩く佐助だけで、私は生き恥を晒されているも同然。
すれ違う女中さん達から注がれる好奇の視線と、武将さん達の訝しげな視線とが混ざり合って堪え難い。
……堪え難いんだけど……明らかに憐れみが多いのはなーんでかな……

恥ずかしさから自然と首が下向いて、前なんかろくに見られやしない!


「旦那ー!ちょっと紹介したい人がいるんだけどー!」


『旦那』が、廊下の向こうにいるらしい。
後ろから響いたのは佐助の大声。

それに気付いて顔を上げたら、丁度向こうもこちらを見た瞬間だったようだ。

なんとも浮き目立つ赤い姿の青年は、刹那の硬直の後凄まじい叫び声と共にこちらへと疾走してくる。

佐助が身を引いたのを縄越しに感じ、何やらよろしくない状態にある事を悟った頃には、旦那なる人の声も聞き取れていた。


「佐助ぇぇえ!!女人を縛るとは……!何をしておるのだあぁあぁああ!」


くわっと開かれた目を血走らせ、有り得ないスピードで絶叫しながら迫る彼。

私にとって恐怖以外何物でもなかった。
色んな意味で怖いよ、アンタ!

動けない私を余所に、その横を走り抜けた凄まじい勢いのまま、後ろにいた佐助を殴り飛ばしていた。


「げふっ?!!?」
「え!?ちょ、ぃやあぁああ!!?」


旦那なる人の勢いは相当。
そのまま殴り飛ばされた佐助の飛距離もざらではなかった。

……誤算だったのは私が縛られていた事。

しっかりと紐を握ったまま飛ばされた佐助に追随して私も体ごと引っ張られる。
宙に浮いて飛んだ佐助の後を追うような放物線を描いたら、見事に落下。

来るべき衝撃を覚悟して閉じていた目を開けてみて絶句した。

確かに、ぼふっ、と柔らかな着地だったけどさ。


若干ノビ気味に佐助の胸板に顔を埋めるように倒れ込んでいる、なんて、誰が想像するのよ?


「ぅぁああぁ?!」


赤くなりながら奇声を発して起き上がろうと試みたけど、両腕の自由は皆無。

抵抗しようとも、佐助の胸に頬を擦り付けるだけに終わってしまう。

ああもうっ、恥ずかしい……!!


「は、破廉恥でござるうぅあぁああ!!」


そんな芋虫のような私を見ていた旦那なる人は、頭から湯気を噴出する程の勢いで赤面しながら大絶叫。
またも凄い早さで走り去って行った。


「え、ちょ、起こして旦那さんんんん!!!!」


置き去りのままの私もその背に大絶叫。

赤い後ろ姿が見えなくなってしまったので、首だけ起こすのを諦めて頭を佐助の胸に戻した。

その時、頬の下の胸に空気が入って膨らむ感覚と、大きな手の平が頭を包み込んだ感覚がして目線を上げた。


「ほんっとに旦那は……。で、わざわざまた頭を戻したって事は、此処気に入ったの?」

「ふざけてないでさっさと起こせーーっ!!」



頭に置かれた手に抗うように力を入れてから、一気に鳩尾に振り下ろしてやった。

ざまーみろ!





 

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