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出会いが肝心










「うっわー、でっかぁ……!!」


城の本丸、門の内側の目の前で着地した私は、首を傾けて感嘆するしかなかった。

だってさ、城をこの近さで見んの初めてだもん。
城なんてデニズーランドの白雪姫キャッスルくらいしか見た事なかったからね。

……計る尺度がもうそこから違ってるのを置いといたとしても。


「うん、うん。俺様の物じゃないけど、やっぱり褒められるのは嬉しいもんだね。」


隣で腰に手をあてて何故か威張る佐助に無視を決め込んで、一歩前に出た。

近付けば近付くだけ首の斜度はきつくなる。
ホントに雄々しい城だ……。



ところで、

視線を真下に持っていくと、いつの間にか目の前にかしずいている佐助が、見上げるように「ん?」と表情を作った。

いくら軽い口ぶりに距離が縮まった感じがするとはいえ、まだ知り合ったばかり。
努めて爆発を抑え、疑問を投げかけてみた。


「何してるの?」
「何って……。なまえちゃんは捕虜だよ?縛らなくてどうすんの?」

「……せめて両手首だけとかにしない?」
「んー……、駄目。」


知らない間に胴体と両腕はぴったりとふっついたまま、荒縄でぐるぐる巻きにされていた。
もはや動かせないので冷静に突っ込んでみたのだが、駄目、と笑顔と共に返される。

こんの野郎……!
握りこぶしを作ってみても、勿論びくともしない程容赦無くきつい。
ぴろん、と一本だけ長く出た紐を握った佐助に、勝ち誇ったような顔で笑われた。


「さ!うちの大将に会いに行くよ!」

「……ねぇ、なんか凄く屈辱的なんだけど……」
「気にしない気にしない!」


ぐ、と背中を手で押され、私はあの雄大な城に足を踏み入れる。
意外にも廊下が複雑に巡っていて、後ろを歩く佐助が紐を使って道順に私を動かした。

ふて腐れて眉間にシワを寄せていると、急に紐を引かれて急ブレーキ。
足だけ前に残って、よ○○と新○劇かと言いたくなるほど綺麗につんのめった。


「この部屋が大将の部屋だけど……絶対に一言も喋んないでね。」
「……う、うん。」


文句を言おうとしたけれど、真面目な顔をした奴の姿に緊張した。

だって、かの有名な『武田 信玄』
どんな大男で怖い人なのだろうかと正直な所ガクブルになる。

(や、やっぱり怖い人なのか……?!)

ごくん、と唾を飲む音をさせた私を佐助は笑うと、音なく障子を開けた。


「只今戻りましたー。」

「御苦労。……その者は?」
「捕虜です、ね。情報を持っていると思われるモンで、連れて来ました。」


注意した割には軽い口調の佐助に突っ込もうと思うのだが、いかんせん縛られては不可能。

ましてや見上げた先にいた信玄公な迫力と言ったら。


(く、くまーー!!!)



第一印象は熊。

怖くない訳がなかった。





 

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