Dreeeeeam!
あまいあまいひと時を(学パロ幸村)
ホントに、幸村君が羨ましいな。
「?何が羨ましいのでござるか?」
口にしていたらしいその言葉を拾われて、あはは、と情けない笑みで軽く受け流した。
+++++++
野球部マネージャーになったのは、もちろん野球が好き、だからなのであって。(たしか部長が人気で、野球の分からない子は小十郎さんが追い払ったって噂があったな。)
理想は叶ったけれど、予想を超えるマネージャーの忙しさに泣きたくなってた。
だけど、そんな日々は一瞬で崩れた。
うちの部長がライバル視するサッカー部の彼……どうも幸村君を見るとそれも吹っ飛ぶみたい。
一目惚れ、じゃない、射抜かれた!
そんな中、ついさっきまでロッカー室で一人会計の仕事に追われていた所に、泥だらけになって入ってきたのはなんとサッカー部のエースだった。
「なまえ殿、こんなに遅くまでお仕事か……!?」
眉を下げてなんとも情けない顔をした幸村君は、何か思いついたように表情を変えると、私がいるにも関わらず凄まじいスピードで着替え始めた。
す、好きな人の、ここ、こんな姿を、み見ちゃうなんて!
引き締まった筋肉は汗ばんでいて、無駄な肉なんて全然ついてなくて……
「あ、あたしななな、何をっ……」
あたふたしているうち、彼は着替え終えて目の前の席に腰を下ろしていた。
その手には、いっぱいのお菓子が。
「いつも頑張っておられるなまえ殿を、賞賛申し上げたい!」
満面の笑みで、彼はチョコの包みを私に差し出した。
++++++++
机の上に広がったお菓子達は、どれもこれも甘くて美味しそうですごくたくさんあった。
一通り広げた所、幸村君が赤くなりながら何やら独り言をつぶやいているみたい。
「だ、男子たるもの、こっ、このような甘味が好きとは……やはり女々しいだろうか……」
幸村君、甘いものが好きだったんだ!
クラスメイトといったって、関われるのはエース同士がライバルな部活の事だけ。
初めて知った彼のプライベートな事に、思わず笑みがこぼれてしまう。
「……やっぱり変なのか……」
「う、ううん?!全然変じゃないよ!」
叱られてしゅんとなる子犬みたいに落ち込む幸村君が可愛くて、すごく必死になって変ではないと伝えた。
すると今度は一転、軽く頬を染めて笑った幸村君。
近くにあったチョコレートをパキッ、と折って口に放り込むと、幸せそうにはにかんだ。
にっこり微笑み返す私も、頬杖をつく。
「ホントに、幸村君が羨ましいな。」
「?何が羨ましいのでござるか?」
急に問い返された事を、あはは、と受け流したあと、心の中で少しだけ泣いた。
何でサッカー部のマネージャーにならなかったの、だとか、どうして幸村君に素直に気持ちを話せないの、だとか
「幸村君みたいに底抜けに明るくて、私みたいに言いたい事も言えないような人じゃない方がよかったなー……なんてね……?」
「そ、某、そんなに言いたい事はなんでも言える訳じゃないでござるよ……!」
だ、だって……
と私の言葉を否定して口ごもった彼は、さらに真っ赤になって俯いてしまった。
「……だって……?」
「そっ………某はっっ……!」
言葉の続きを待ちながら、私はチョコを口にほおった。
チョコがとろりと口の中で蕩けた頃、テーブルの向こうの幸村君ががたりと立ち上がってこちらに向かってくる。
びっくりしてそちらに身体ごと目線を向けた。
そして、
感じた唇への温かい感覚。
「っっ!??!」
「だっ……大好きでござるなまえど……のっっ!!」
答も聞かず、幸村君は「破廉恥でござる」と叫んで部屋を飛び出していってしまった。
あまいあまいひと時を
―――う………そっっ!!!
―――破廉恥でござるぅうぅぅうう!!!
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