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Dreeeeeam!
泣いて、くれますか?(小太郎+)過去拍手





ひゅー、ひゅー。


「……だれ、か。」


来て。

寒い。

悲しい。



死にたくない。



風が喉で音を鳴らし、掠れた声をも掻き消してしまう。

普通の町人でも分かる、自分の死期の近さ。

走馬灯こそ回らないけれど、潤んできた瞳の前に居るような幻覚の貴方。
かたかた震える右手をそちらに伸ばした。


「こ……、たろぉ………っ」

「………。」


うん。幻覚。もうそれでもいい。

大好きな貴方が最期、側に居てくれるならそれでいいの。

必死で、幻覚に向かって話す私を見ている人がいたなら、どんなに滑稽だろう。
そんな事だって気にする余裕はなかった。


「…た…けだの、忍に……襲われ…ちゃった……ゴメン、ね……?」


ごほっ、と咳込んだら、血が溢れた。

貴方が、顔を歪めるのが見える。
でも、何も話してないよ。大丈夫、だよ。


「あたし、何も……言ってないよ。…安心して……?」

「っっ……!」


ぐっと抱き上げられたその腕の暖かさは身に覚えのある感覚で、遂に感覚まで麻痺したと悟った。


「ふふ………小太郎、幻覚の癖に……あったかい、や……」

「……しゃべ、る、なっっ……」



思わず、驚いた。

絞り出した掠れ声は、貴方の失った声。
焦ったように一言だけ告げて、彼は空へ舞う。


「も、無理だよ……たすから、ない。
だって………ね、夜空も、星も、月も、小太郎の顔も………

……もう見えないんだもの。」


そう言い終えて虚ろな瞳を向けたまま微笑んでから、もう一度唇を動かした。



「         」




彼女の唇は何かを言おうとして言葉は声にならず、己の首に回していた腕が力を失う。


「っっ………?!」



長い間発さなかった声で名前を呼んでも、答えは返らなかった。



その唇が紡ぐ言葉












泣いて、くれますか?




―――そう言った彼女の頬は濡れていた





11,06,13〜12,01,07





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あきゅろす。
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