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Dreeeeeam!
空蝉(佐助/シリアス死)





「うわっ、びっくりしたっ」
「どうした?」


林の中。
互いの姿は見えないまま走っていたら、突然なまえは大きな声を上げた。

自分は少し先を走っている。
俺はその足を止めて、彼女がいるだろう方向へと戻ってみれば、そこにはしゃがみ込んで何かを見つめるなまえ。


「……遊んでるなら先行くよ?」
「遊んでないですよ!…ほら、長も見てみて下さい。」


手招きに応じて覗き込んだ其所には、仰向けにひっくり返った蝉の死骸。
なんて不吉なものを見せるんだ、と目線だけで言えば、なまえは頬を膨らませた。


「走ってたら、急にボスって音がして驚いたんです。」
「音の原因がこれ?」
「そうです。……これって最期に立ち会った訳ですよね?」


躊躇いなく伸ばされた彼女の手は、小さな穴を掘った。
蝉の為の墓穴、最期を看取ったから……この子は何処まで人が良いのか。
溜め息一つ、蝉をその穴の中に納めてやる。
途端、驚いたように彼女はこちらを振り返った。


「長も手伝って下さるんですか!」
「……終わらないと動かないつもりだろうからね、なまえ。」
「当たり前ですよ。……あ、はい。線香。」
「………用意のいいこって……」


受け取った線香を小さな土山に立て掛けて手を合わせれば、隣でなまえは立ち上がりながら大きく伸びる。

さっ、長行きますよ!…なんて。
自分が足を止めた原因だと分かってないな。
だから説教がてら、当たり前の常識を口から零した。



蝉は一週間しか生きられない。
何年かかって地上に出ても、その命は見合わない程に短い。

「忍も似たようなもんだ。いくら修業期間が長くても、戦で死んだらあっという間に無に還る。」
「……この蝉は、最期に私を見たんですかね?」


え?
的外れななまえの問いに、思わず気の抜けた返事を返したが、彼女の表情は真面目なもので、目はじっと蝉の墓を見ていた。
その目が、今度は俺を射抜く。


「私が死ぬなら、最期に長を見ていたい。」
「何言って……」
「それから、長から看送られたい。」


差し出されたのは火のついていない線香。
常に携帯しているのだろう。外箱がほつれ始めていた。
これを、俺に?


「何言ってる…!お前は生きて俺…いや、旦那や大将に仕えるのが仕事だろ!!」
「……でも」
「『でも』じゃない!」


突っ返した線香の箱は、彼女の手から零れて散らばる。彼女がそれを拾うことはない。

重い空気の中、俺は気付けば走り始めていて…いつものように少し後ろから、なまえがついて来る。

それに安心しただなんて。
……今となって気付くなんて。



















空蝉



後日の戦。

彼女は最期に俺を見ていた。







(彼女が地に倒れるあの音が)

(今でも耳から離れない)





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あきゅろす。
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