Dreeeeeam!
常秋の君(忍組、幼児ヒロイン)
寝る子は育つ。
だが、寝る子は非常に重たいのも事実だ。
「………何故約束の時間になってもアイツ等は来ない!!」
悪態は声を潜めて最小限にしたが、どうやら腕に抱いたこの子には伝わってしまったのだろう、少々ぐずるので慌てて腕を揺らした。
収まったくずり声、すぅ、と落ち着いた寝息にほっと溜め息をついた頃、漸く、赤の木々の奥から聞き慣れた二名の足音。
「あららー、良いお母さんになったねぇ。」
「っ貴様……!なまえがいなければ斬っているぞ……!」
「まぁまぁ、怒りなさんなって。な?風魔の旦那?」
「………(コクン)」
両名とも血の香りは無し、香るのは仄かな湯の香り。
どうやら任務上がりだったらしい。
今まで抱き抱えていた幼子……なまえをゆっくりと風魔に手渡した。
「いやー、何で俺様達こんなことしてるんだろうね。」
「知るか。元はと言えばお前が拾ったんだろう。」
「確かにそーだけどさぁ……」
この子、普通じゃないもん。
と口を尖らせた佐助の言葉は悔しいが信じる他ない。いや、私だってその場にいた。
確かに…なまえは、上杉領を嗅ぎ回る為に気配を消していた筈の佐助を、捜し当てたのだから。
もう一つ言わせて貰えば、なまえが「おにいちゃん、かくれんぼしてるの?」と言うまで、私達はその存在に気付いていなかったのだ。
「かすがは気配丸出しだったからあれだけど……俺様見破られない自信はたっぷりだったんだけどね。」
「言ってろ。」「………。」
「えっ、ちょ……風魔の旦那まで……」
む、無視?!
と慌てる佐助を制したのは伝説と呼ばれる男。
あのあと一時休戦、なまえの名前を聞き出してから親を探そうとして真っ先に思い浮かべた人物が風魔だった。しかも二人して。
理由が佐助の発見、それから二人の殺気に少しも物おじしていなかったその図太さ。
確かめるしかないと北条領に入れば例の如く攻撃の雨霰に迎えられ、佐助の必死な一叫びで現れた風魔も、なまえを見て首を傾げただけだった。
「……(ジトー)」
「なまえちゃんが起きるって……アンタら本当に親子じゃないの?なまえちゃん風魔の旦那に懐きすぎじゃん。」
……本当の事を言えば、私だって風魔のなまえ溺愛振りには目を剥いた。
最初は意外過ぎて何も言えなかった位に衝撃的。
それを正直に口にした佐助は殴られて木から落ち、色付いていた木葉が盛大に舞った。
「んう……こたろ…?」
「……(ヨシヨシ)。」
遂に目を覚ましたなまえ。
ゆったり目を擦って両腕を風魔に伸ばす。
表情の変わらない筈の奴も、口元を弧にして彼女の頭を撫でた。
「あいたたた……手酷いねぇ……」
「さっけ!かすが!」
「あ、おはようなまえちゃん。」
「良く寝たか?」
そういう自分も笑っているのはさておいて、木の上に戻って来た佐助と私が漸く目に入ったのか、なまえは元気よく跳ね起きた。
自分が寝ている間に連れて来られた森の中が気になるのか、なまえは瞳の焦点を遠方のままぐるりと辺りを見回して、今度は近辺に合わせてもう一周。
ぴたり、その首が止まったのは佐助の顔だった。
そして、にっこりと嬉しそうな笑顔。
「どうしたのー?鳥さんでも見付けた?」
「秋の精さん見つけたよ!」
「………?」
満足そうな彼女に対して私達3人は頭上に疑問符。
秋の精……この子は妖怪の類だったのだろうか……
そんな心配を余所に、なまえは一人一人を指差した。
「こたろは真っ赤なもみじさん、かすがはきんいろのいちょうさん、さっけはだいだいのかえでさん!!」
「髪の色……か?」
「はは、なまえちゃんは想像力豊かな子だねぇ。」
「っ……!!(ぎゅー!)」
風魔に抱きしめられて掛かる赤の髪を、くすぐったそうにしながら笑う。
微笑ましい光景。
彼女の髪は落ち着いた栗色。
「なまえは栗さん、だな。」
「栗さん?……あっ、さっけ!栗まんじゅう食べたいー。」
「はいはいっ、じゃあこれから上田に行きますかね。」
「………(ガシ)」
「………4人でね。」
常秋の君
−−来週のおやつ考えなきゃなぁ……
−−風魔に預けると肥えそうだ……
−−………(栗饅頭も好き、か。)
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