[通常モード] [URL送信]

Sentence
青い鳥


童話、青い鳥不完全パロ。
絵本口調、シリアス死ネタ注意





















とある町に、片倉 小十郎という青年がおりました。

恐持ての容姿、真っすぐ通った芯が、彼の性格をよく表していました。


そんな彼は、病に臥す主君の政宗の為に『幸せの青い鳥』を探しに冒険へと旅立ちます。



……しかし、探しても探しても青い鳥は見つかりません。
見つかったと思っても、青い鳥はすぐに姿を消してしまいました。





我慢弱い彼の苛々は頂点に達しそう。

青白い火花をパチパチ纏った彼は、次なる町へと向かいました。



長い長い、地球の中心へと続くような下り坂を進んでいくと、その底には深い闇に包まれた星の輝く美しい町が見えます。



「此処が、夜の町か……。」




決して太陽の昇らない、月に支配された町に、青い鳥なんていないだろう。


そう思った小十郎は、わざと道を外れて森に足を伸ばしました。




鬱蒼と繁る森はなんとも気味悪く、町の人間など近付きもしません。

しかし肝の据わり切った彼にはなんのその。
全く気にする事なく進んで行きました。




「くそ…っ、出てきやがれ青い鳥……!」





そう、悪態をついた時でした。


目の前の茂みから、バサバサっ、と音を立てて何かが飛び立ったのです。




「青い鳥かっ……?!」




羽ばたきの勢いから身を守る為に、両手を顔の前で交差させていた間からのぞき見てみると、茂みの回りには黒い羽が散らばっています。

茂みから飛び立ったのは、鴉でした。



小十郎は苛々してたまりません。

一枚空から降ってきた黒い羽を引っつかむと、勢いに任せて握りしめました。



すると、森の何処からか、至極楽しそうな笑い声がするではありませんか!


元々勘の鋭い小十郎は、自分の頭上を思い切り見上げて怒鳴りました。




「何様のつもりだ!!」


「怖いねぇ、そこの旦那。久々の人間なんだから、もちょっと穏健にいこうよ?」








そこにいたのは、人のような鴉でした。


黒と緑の服に、闇に映える美しく派手なオレンジの髪をしていました。


何よりも、彼の背に生えた黒い翼が、彼が人外のものだと証明しています。




苛ついていた小十郎は、ひとまず眉間のシワを深くして彼を見つめました。



「誰だ、テメェ……」


「俺様?俺様はねぇ、猿飛 佐助。ここいらの森の鴉の頭領なんだー。」




にっこり、と張り付いたように笑ったその鴉は、旦那は?と小十郎に聞き返しました。


気分の悪い小十郎は、名前と自分が来た町だけを短く告げて、そのまま背を向けようとしました。



「あ、ちょっと待ってよ小十郎さん!」



その背を止める声に振り向くと、鴉は木から飛び降りていて小十郎の方へと足を進めていました。

黒い羽がふわふわと鴉の回りを取り巻いています。



「青い鳥、探しに来たんでしょ?俺様手伝ってあげるよ?」

「……初対面の奴に頼る気はねぇ。断る。」

「えー……。だって、ほら。『青い鳥』……。」




鴉は、勿体振るように自分の懐から一枚の羽を取り出して見せました。

その羽は瑠璃色に輝いていて、とても綺麗な光を放ちます。






まさしく、青い鳥の羽でした。


それを見た小十郎は、がっしりと鴉の肩を掴んで揺さ振りました。




「テメェ、それ何処で……!」

「そうだなぁ……。小十郎さんが此処の森に住んで、色々雑務やってくれる、って言うなら、探すの手伝ってあげてもいいけどねー。」




黒い笑みを浮かべた鴉は、どうする?と聞きます。


ぐぐぐぐ、と苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた小十郎は、渋々その要求を呑んで、鴉が用意してくれた小屋へと向かいました。




前を歩く鴉はずいぶんと上機嫌でニコニコと笑っていましたが、小十郎にはその笑顔がとても不自然に見えた気がしました。


鴉の事が、気になったのです。





 

[次へ#]

1/3ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!