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錬金術


『あ…あり得ない』


私は今 四方を木に囲まれた森の中に立っている

曾良君から俳句を貰う前…いやそれ以前に握手とかサインとか記念撮影とかする前に 恐らく次の世界と思われる場所に飛ばされてしまった
手元に残ったのは 池袋の戦利品と芭蕉さんの残念な俳句(サイン色紙つき)
これはこれで思い出にはなったけど 嬉しくない…


『私は曾良君のが欲しかったのにィィィ!!』


「そこに誰かいるの?」


全く気配を感じとれなかった
慌てて声の下後ろを振り向くと どこかで見たことのある鎧が立っていた


『……え』


絶対に見たことある!!でもなんだったか思い出せない なんだったけ…


「アル どうしたー?」


「あ 兄さん」


『あああああ!!』


鎧の後ろから現れた金髪の少年の姿を見た瞬間 思い出した

先ほどの芭蕉さんと曾良君の事が一瞬で吹っ飛んだ

今目の前にいるのは 手のひらぱっちんで錬成ができる錬金術師の兄弟だ
つまり…ここはかの有名な錬金術が発達した世界ということだ


『エルリック兄弟ですよね!!私ファンなんです!!握手してください』


「「…え?」」



〜錬金術師篇〜


毎度?恒例の思い出作りを早速始めた
とりあえず記念撮影から始めたが 二人は携帯を知らないらしく はじめは警戒していたものの 携帯で実際に自分を写したり 用途を説明したらとても興味を持ってくれた


「へえー…すげーこんなちっこい機械一つでいろんな事ができるんだな」


「すごいねこのケイタイってやつ 僕たちは見たことないから…えっと どこか異国の人かな?」


『まあそんなもんです』


記念撮影をしてサインをもらって握手をした時 彼らの手を見つめて私は思いきってお願いしてみた


『あの!錬金術を見てみたいんですが!』


「別にいいけど」


エドワード・エルリックもといエドは私の手を自分の手から外し 少し離れるように言った
私がアルフォンス・エルリックもといアルとともに離れたのを確認すると 彼は祈るように両手を合わせ その手を地面に押し当てた
瞬間 彼の手を中心に地面に錬成陣が現れ バチバチと火花のような青い光が放たれ みるみる地面が姿を変えた
地面は抉れたようになり 彼の手には鋼の剣が握られていた
その剣を一振りし にっと笑いエドは言った


「どーよ?」


かっ…


『かっけェェェェェ!!』


テンションが上がり 思わずアルの手をとりエドの元へ駆け寄る


「ははん こんなの俺にとっちゃ朝飯前よ!」


いつもなら 調子のんな!とツッコみたいところだが 今はそれどころではない


『その剣記念に下さい!』


「えっでもこれかなり重いぜ?」


『大丈夫だ 問題ない』


「問題大ありだよ!女の子が持つものじゃないし」


『大丈夫ですよ 一応剣は習ってる身なんで』


そう言うと彼は渋々私に剣を差し出した 受けとると同時にズシリと重みを感じ よろける


「だから危ねーって言っただろ!!」


エドは私から剣を引ったくると 再び両手を合わせ剣を錬成し直した


「おらよ」


彼が再び私に差し出したのは 短剣とまではいかないが 先ほどよりいくぶんか刃が短くなった剣だった
重さも木刀と同じくらいになっていて しっくり来るものだった


『ありがと』


嬉しくなって 満面の笑みでお礼を言えば エドは目を丸くしてそっぽを向いた
横でアルが 兄さんは恥ずかしがりやなんだよ と言うと どうやら聞こえていたらしく 叫びながらアルに飛びかかった


「べっ別にコイツのためにやったわけじゃ…!!」


『…ツンデレか』


「ツンデレって?」


『ツンケンしながらもかいまデレたりする 素直になれない子の典型パターン』


ツンデレを説明してあげたら エドに殴られた
オートメイルじゃない方の手で良かった…!!


『…あ』


ふと自分の手を見て 思わず声をあげてしまった


「どうしたの?」


『いや!何でもないの 私そろそろ行かなくちゃ!!』


異国から来たということになっている私は この二人の前で消えるわけにはいかない


『二人とも引き留めちゃってごめんなさい!じゃあどうもありがとう!!』


いよいよ本格的に透けだした身体を隠すように 素早く雑木林に駆け込んだ


「っおい!」


慌てて後を追ったエドとアルだったが 彼女の姿を見つけることはできなかった


「名前…聞きそびれたな」


「…うん」




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