森と秘密基地の入り口
『沢田さん…何ですかアレ』
「だから俺ん家兼職場」
『いやだから何ここ!?何で森の中?しかも沢田さん家って何それ!秘密基地の入り口じゃん!』
顔を上げたのが遅かったせいか、自分が立っている場所が何処なのか理解するのに、少し時間を要した。
森の中の少し開けたところに停められたベンツ、沢田さんの指差す先には明らかに怪しい秘密基地の入り口的な何か。
「うん。名前ちゃんの言う通り、俺の仕事先って秘密機関だったりするんだ」
笑顔で言う沢田さんに一言言いたい。
こわいんですけど!
『…さっき言ってたボンゴレってやつですか?』
「そうそれだよ。詳しくは俺の部下を紹介してから話すよ」
『部下って…まさか沢田さんその若さで上司ですか』
「ははっ上司って言うか実はトップなんだ」
沢田さん…恐ろしい人!!
じゃ、行こうか!と私の背中をトンと押して歩き出した沢田さん。もう絶対に逃げられない…
ここに来る前に諦めてはいたが、改めて思い知らされため息が出た。
…………
沢田さんの一歩後ろを歩きここまで着いてきたが…
本当に何の仕事をしているのか気になる!めっちゃ広いんだもの沢田さん家(?)
秘密基地の入り口から入り、倉庫のような謎のスペースを横切り、エスカレーターで更に下がり、更に謎のスペースを横切り、更に(以下略)
とにかく今は、ものすごく豪華なゾーンを歩いている。だってカーペット赤いんだもの!よくわかんないけど金色の額縁の絵が飾ってあるんだもの!
一定の感覚で現れる扉もドアノブもアンティーク調で、綺麗すぎて触るのに抵抗がある。
そして、なぜ地下なのに窓の外夕方なの?なぜ庭園的なものが見えるの?
瞳に一つ映る度に増す好奇心。全てが高級感漂うもので、自分だけが異質に感じてしまう。夢なんじゃないかと頬をつねってみたが、痛かったからやはり現実らしい。
ふと、大きな扉の前で足を止めた沢田さんに、自然と私も立ち止まり扉を見上げた。
「お疲れさま。みんな多分ここにいるから。入ろっか?」
そう言われ、不覚にも緊張した。何だかまた転校した気分だと思いながらも、私は沢田さんの言葉に頷いた。
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