世間話とエスコート 『…で、どこに向かってんですか?』 「俺ん家兼仕事場」 もう絶対に逃げられないとわかったので、諦めて沢田さんとお喋りすることにしました。 『ここから遠いんですか?』 「並盛だからそんな事ないよ」 『遠いわ!隣町じゃないですか』 「時速100キロくらいで飛ばせば30分もかかんないよ」 『警察に捕まってしまえ』 毒舌を吐くが、沢田さんはそれを笑い飛ばすばかりだ。効果はいまひとつのようだ。 「ははっ大丈夫だよ。いろいろ手を回してるから」 『いろいろって何ですか?怖っ!サングラスの人と言い、何者なんですか沢田さん』 瞬間、ピシッと空気が固まった。 どうやら触れてはならない話題だったらしい。沢田さん明らかに同様してるよ。 「うーん…詳しくは着いてから話すよ。あんまり知られたくないんだけど、名前ちゃんはどうせいつか知ることになるだろうし」 『いつか?』 よくわからないが、とりあえず沢田さん家兼仕事場に着いたら話してくれるらしい。 それから、たわいのない話をしているうちに、車は沢田さん家兼仕事場に到着したらしい。 到着しました。と運転手さんがドアを開けてくれたので、車から降りようとしたら、先に降りた沢田さんが手を差し出してきた。 意味がわかりません、の意をこめて沢田さんの方を見ると、 「お手をどうぞ、お嬢さん」 と、いたずらをした子供のような笑みを浮かべた。 『ええっと…その…ははは』 その笑顔のせいでもあるけど、そんなエスコートのようなこと自体してもらった事がないので、恥ずかしくなってしまった。 ぎこちない仕草で何とかその手を取ることができたものの、あまりの恥ずかしさに顔を上げることができない。 「あははっ!かわいいなぁ」 『ぐっ…』 何だか、してやられた気分だ。悔しくて沢田さんを睨みつけたら、更に笑われた。むかつくぞ! 『いつまで笑ってんですか!』 「あはははっごめ…ぷぷっ」 『…いい加減泣くぞコラ』 しばらく経って、やっと治まったらしく沢田さんは涙を拭いながら、ふーっと息を吐いた。 そしてこちらを向くと、ニコリと笑みを浮かべ、次にある方向を指差した。 「じゃあ改めまして、ようこそボンゴレへ!」 『はい?ボンゴ…』 沢田さんが指差した先を見た瞬間、言葉を失った。 ←→ |