嫉妬とナイフ
さっきから睨まれ続けている私は、そろそろ精神的に臨界突破しようとしていた。
「…何だこのカスは」
「ベルが日本から連れてきた名字んとこのガキだぁ」
「…ふん」
怖さがロン毛さんの二倍増しなんですけど!
全く興味無さげに私を一瞥すると、くるりと背を向け何処かへ歩いていってしまった。
「ふーん、お前なかなかやんじゃん。ボスから許可貰えるなんて」
『今のやりとりで許可貰えたの!?』
私一言も喋ってねーよ!
遊べ遊べとせがむ王子さん(うざい)をシカトして、私はロン毛さんに本当に許可が下りたのか再確認した。
すると、ロン毛さんは頷きながら「お前が今生きてんのが何よりの証拠だ」と意味深な言葉を添えて、返してくれた。
『え、どういう意味すかロン毛さん!?許可下りないと死ぬんですかこの屋敷は?存在すら認めてもらえないんですか!?』
「誰がロン毛だぁ!!」
あ、やべ。
どうやら怒らせてしまったようだ。でもしょうがないよね?ロン毛さんの本名知らないし。
そんな私の意を汲み取ったのか、ロン毛さんは微妙な顔をしながら自己紹介をしてくれた。
「…スペルビ・スクアーロだぁ゙」
『名字名前でシュッ…』
自己紹介の途中、私の頬を背後から何かがかすった。
慌てて後ろを向くと、仏頂面の王子さんがナイフを構えて立っていた。
『えええ!?王子さん何すんですか!?』
「ベルテメー危ねーだろお!!」
もう一度スクアーロさんの方を見ると、飛んできただろうナイフを人差し指と中指の間に挟み、見事顔面前でキャッチしていた。すげー!!
「お前は俺と遊ぶためにここに居んだろ?スクアーロなんかと話してないで俺と遊べよ」
『ギャア!』
後ろから、ナイフがかすった方の頬を撫でられ、思わず変な声を上げてしまった。
そして私の頬を撫でた王子さんの指に少量血がついているのを見た瞬間、あ、死ぬかもと思った。
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