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遅刻と王子


『やばいよ遅刻!』


何で起こしてくれなかったの了平さん!!と叫べば、俺は極限何度も起こしたぞ!!と10倍の声量で返された


「笹川先輩の声で起きないってスゲーな!」


「感心してる場合じゃないよ山本。今日は獄寺君いないから、山本が名前ちゃん送ってあげるんじゃなかった?」


「あ!そういやそうだったな!」


「…こんなのんびりしていて大丈夫なの」


『大丈夫なわけないじゃないですか!』


のんきにお茶を啜る雲雀さんにそう返しながらお弁当を受け取り 鞄の中に押し込んだ


『山本さんダッシュ!』


「おおっ!」


本気の私とジョギングのノリの山本さんが同じ速さってどうなの?と思いながらもエントランスに向かう。この角を曲がれば…と思った瞬間、目の前に人影が現れた。何このベタな展開!

ぶつかる、と目を瞑ったが衝撃が来ることはなかった。目を開けたが、目の前には誰もおらず、自然と身構えていたらしい私の体はバランスを崩して、そのまま床とこんにちはをするはめになった。


「大丈夫か?」


慌てて駆け寄ってきた山本さんに、大丈夫です、と答えながら体を起こした。


「山本武、このチンチクリンなに?」


『え?』


(失礼な)声が聞こえてきた後ろを振り向いたら、視界にキラキラ光る金髪のお兄さんが入った。しかも頭に何か乗っけてる。何それギャグ?
お兄さんを凝視していると、山本さんが私の手を引き立たせてくれた。


「ほら、今ボンゴレで預かってる名字さんとこの娘さんだ。話には聞いてんだろ?」


「あー…噂のガキんちょね」


『山本さんこの人何ですか?』


さっきから人のことをチンチクリンとかガキんちょとかバカにして…!
そして補足させてもらうと山本さん、ボンゴレで預かってるんじゃなくてボンゴレで誘拐してきたですよ。


「あー、ヴァリアーの幹部のベルフェゴールだ」


「ししっ王子のこと知らないとかお前何なの」


いや、お前が何なの。
一人称が王子の人初めて会ったよ。しかも外人かよ。


『どーも名字名前です。じゃあ山本さん学校行きましょうか、マジで遅刻するんで』


これ以上ここに留まると本当に遅刻するし、なんかこの人めんどくさそうだから、私は山本さんの背中を押して地上へ繋がるエレベーターに向かう。一刻も早くこの王子さんから離れたい。


「お前さー王子にそんな口聞いていいと思ってんのー?」


『え?』


振り向くより早く、私の視界は反転した。


「山本武、ちょっとコイツ借りてくわ」


「んー…いんじゃね?ツナには俺から言っとくわ」


『えええ!?よくねえええ!』


何言ってんの山本さん!私今から学校!
いつの間にか王子さんに担がれていた私は必死にもがいてみたが、全然離してくれない。


「まーたまには息抜きも必要だぜ名前!」


「そーそー。俺と遊ぼーぜ。ナイフ投げとかで」


息抜きっていうか、息の根止まる!
怪しく光るナイフで頬を撫でられ、抵抗する気力を一気に持ってかれた。抵抗したら死ぬからねこれ。

私が抵抗しないことをいいことに、王子さんはそのままエレベーターに乗り込んでしまった。





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