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雲の人と昼休み


『…雲雀さん、何故あなたが学校に?』


「見てわからないの?君の昼食を届けに来たんだよ。ちゃんと逃げずにいるみたいで安心したよ」


はい、と私の方に投げられたお弁当をキャッチし、立ち上がりながら昨日のやり取りを思いだし、確信した。
沢田さんでしょ!昨日の言葉はマジだったのね!
確かに、見張りで怖い人って言ったら雲雀さんは適任だけど、群れが嫌いなこの人が学校の、しかも昼休みの教室なんかに来たら…。


「それより、この群れは何?君、いつもこんな群れの中で過ごしてるの」


『え…いや、あの』


私が何と答えて良いか困り口ごもっていると、痺れを切らせた雲雀さんが右手を振りかざした。


「咬み殺す」


ほらぁぁぁ!!
慌ててしゃがめば、頭の上で風を切る音が聞こえる。次に、はらはらと細かい髪の毛が舞い落ちてきた。


『…はは』


「ワオ、なかなか楽しめそうだね」


『むりむりむりむり!』


今のたまたまだからぁぁぁ!!
助けを求めるべく周囲を見渡したが、クラス全体が私からかなり離れたところに机ごと移動していて、頑張れ☆という顔でご飯を食べていた。裏切り者…!!
雲雀さんへと視線を戻せば、彼はそれはそれは楽しそうな顔でトンファーを構えていた。…これ死ぬな、私。
恐怖のあまり思わず目を瞑った途端、再び教室の扉が荒々しく開かれた。


「雲雀テメー!!会議にも出ずにどこに行ったと思えばこんなとこで何やってんだ!!」


「なに、邪魔しないでよ。それとも君が咬み殺されてくれるの?」


ナイスタイミング獄寺さん!!
獄寺さんのおかげで寿命が伸びたのはありがたいが、二人の間を漂う不穏な空気に嫌な予感しかしない。


「今すぐ戻れ。10代目の命だ。従わねーってんなら…果す!!」


「へえ、面白い」


ジャキッと武器を取り出した二人に、一気に血の気がひいた。
だってこんなとこで暴れられたら…この人達が一応私の保護者なんだから、学校破壊したり万が一生徒を傷つけたりしたら…間違いなく私は学校に来れなくなる!!それだけは勘弁してほしい。
何とか二人を止めなければ…でも、どうやって?

そんなとき、ふと骸さんが言っていた言葉を思い出した。雲雀さんを敵視してる彼が、やたら私の元で雲雀さんの別に欲しくない無駄情報をペラペラ話してた中に、使えそうなのがあった。でも上手くいくのか?
ええい!迷ってても仕方ない!

一か八かで私は二人の間に飛び込んで、バッと両手を広げて雲雀さんを睨み付けた。
走り出そうとしていた雲雀さんは、不愉快そうに眉を寄せた。


「…何」


『ここで喧嘩しないで下さい!』


「邪魔しないでよ。ぐちゃぐちゃにするよ」


ぐちゃぐちゃって何!!
私は恐怖で震える唇を噛み締めて、大きく息を吸った。


『今日の夕飯、ハンバーグにしますから!!』


ピタリ。
雲雀さんが目を見開いて停止した。それから、ふっと笑うと戦闘体勢を解いた。


「そう。じゃあ楽しみにしてるよ、君のハンバーグ」


『いや、私はただ料理長さんに頼んでメニュー変えるだけで…』


「何言ってるの?君が作るんだよ」


じゃあ、と私の頭に手を乗せてから、雲雀さんは素直に教室から出ていった。
微妙な顔で立っていた獄寺さんも私と目が合うと、ドンマイ、と呟いて教室から出ていった。


『…ははは』


シンとした教室の真ん中で、私はへなへなと座り込んだ。



あきゅろす。
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