[携帯モード] [URL送信]
魔王とお弁当


「……大変だったね」


『うん…』


翌日何とか学校に行く許可をもらった私は、無事登校することができ、午前中最後の授業が終わった今は友達と談笑している。
朝は沢田さん達の説得に時間を使ってしまい遅刻ギリギリの時間に登校したため、クラスメイトと話す機会がなかった。だから昼休みになるや否や私は友達に囲まれてしまった。


「名前も大変だよね…あの保護者」


「カッコいいのは認めるけど」


「バイオレンスだよね」


『そうなの!』


話(彼らへの愚痴)に花を咲かせながら、雰囲気はお弁当タイムになっていた。みんなあらかじめお弁当を持って私の席に来ていたので、私も鞄の中からお弁当を取り出す。
ところが、鞄の中のいつものお弁当の定位置に突っ込んだ手は、何にもあたることなく空を切った。あれ…?
鞄を覗いてみると、入っているはずのお弁当がない。


『あ……』


そうだ!今日お弁当を厨房で受けとる前に沢田さん達に勝負を挑んだから…


『ごめん、私お弁当忘れちゃった』


購買行ってくるね、と席を立ったのと教室の扉が開いたのはほぼ同時だった。


「……名字名前はいる?」


とっても聞き覚えのあるその声に私はとっさに机の下に隠れた。だって、ねえ…?
友達は彼の放つ殺気的なあの禍々しいオーラを感じていないのか、何あのイケメン!?とかキャーキャー騒いでる。死ぬ。絶対私達死ぬ。

こっそり覗いてみると、案の定彼はこの人間が集まる空間に眉を寄せて、不機嫌丸だしの顔をしている。そしてその手には…


『ぶっ…!』


ええっ雲雀さんが私のピンクのお弁当袋持ってるううう!何あの構図?似合わなっ!!
でも笑ってはいけない。堪えろ、堪えるのよ名前。ここで笑ったら二度とお日様を拝めなくなる。


「ねぇ、君」


『ぎゃああああっ痛っ』


必死に笑いを堪えていると、突如頭上から雲雀さんの声が聞こえ、思わず叫び机に頭をぶつけた。痛い…
のそのそと机の下から出て、恐る恐る雲雀さんを見上げれば、うん、自分の死期を予測するなんて容易なことだった。




あきゅろす。
無料HPエムペ!