冷たい指先 「……ん…」 額に誰かの温もりを感じて意識が覚醒する。 うっすらと霞が晴れる視界にいたのは、心配そうな顔をした篠ノ女だった。 「鴇、大丈夫か?」 俺の額から手を引き、体を起こそうとすると背中に手を回して手伝ってくれた。 「…俺、どうしたんだっけ…?」 どうして保健室のベッドで寝てるのか、記憶を探るも思い出せない。 すると篠ノ女が呆れたような顔をして、 「どうしたんだっけ?…じゃねぇだろこの馬鹿!………廊下歩いてたらいきなり倒れたんだよ、お前」 俺の頭を叩こうとして手を出しかけたが、一応病人だと判断したのか、自粛してくれたのは有難い。 まだ頭痛がするから。 そうだ、倒れたんだ俺。 「ば、馬鹿ってなんだよ!しょうがないじゃん、急に目の前が真っ暗になって、なんか倒れちゃったんだから!」 「わかったわかった。そんだけ元気ありゃもう大丈夫だな。……ったく、心配して損したぜ。帰るぞ」 篠ノ女の傍らには登校中、電車の中で読んでた本がある。 確か、朝は4分の1程度しか読まれてなかった本。 それが今は、読み終わっているようで、栞が最初に挟まれている。 ……あれ? 今日は体育とか、梵天や銀朱先生の授業があったから比較的真面目に篠ノ女が授業を受けてる、はずなのに……(梵天や銀朱先生は篠ノ女が授業サボるとテストの点数が良くても強制的に補習させるから) 「ひょっとして篠ノ女、ずっとそばにいてくれてたりしちゃってた?」 「……関係ねぇだろ、馬鹿が。早くしないと置いて帰るぞ」 そう言って篠ノ女は、立ち上がって顔を背けた。 …でも篠ノ女、耳が真っ赤だよ。 「篠ノ女」 「んだよ」 「大好き」 「…うっせ」 ぶっきらぼうで素直じゃない彼の手は、暖かった。 END [次へ#] |