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護り(遼珠)

紅葉が綺麗な時期に今朝から一人、私は黙々と境内の掃除をしていた。

落ち葉でいっぱいだったし、美鶴ちゃんには家のことほぼ全部といっていいほど任せちゃってるし。

境内の掃除は誰がやる、となったら暇をしている私が名乗りでて今にいたる。



珠「まあ、暇潰しになるからいいよね。案外掃除って楽しいし」

遼「なんだ。真面目に掃除してるかと思ってきてみれば、楽しそうに独り言ぶつぶついってやがるのかお前」

珠「なんで遼がここにいるの?!」

遼「決まってんだろ?お前を食いにき――」

珠「――そんな理由なら早く帰ってよね!」

遼「それは、この家にきた理由だ。今ここにいるのは、一応あの女に頼まれ物を任されたから持ってきたというところか」

珠「頼まれ物?というかあの女って美鶴ちゃんのこと?随分と嫌ってない?あんな可愛い子に向かってあの女だなんて」

遼「知るか。あの女がなぜだか俺を敵対視で見てくんだよ」

珠「そんなわけないじゃない。美鶴ちゃんが無闇やたらとそんな人をするはずないし。遼になにか原因があるんじゃない?」

遼「そんなもの俺が知るかといっているだろ。黙らないとその口塞ぐぞ」

珠「ちょっと、境内でなにしようとしてるのよ!?誰かきたらどうすん――」

美「――珠紀さまの仰られる通り。このような公共の場でそんなき、キスをしようとするなんて、は、破廉恥です」

遼「うるさい、黙れ。取り込み中だ」

珠「美鶴ちゃんの前で、なにしようとしてんの!」

遼「じゃあ、こいつがいないところならいいのか?」

珠「それもだめ」

遼「それならどこで食おうが、俺の勝手だ」

珠「ちょっと、そうことじゃないから」

美「狗谷さん、あなたはもう帰ってください!珠紀さまが嫌がられております!」

遼「嫌がる?そうなのか?」

珠「なんで、意外だって顔してるの?行動と言語から察しなさいよ!」

美「珠紀さまのいう通りです。神社の境内から出てください。穢れますので」

遼「そんなわけあるか。ったく、ここに来たのはお前の頼まれ物を渡すためだろ。まだ渡せてねえ」

珠「頼まれ物?」

美「お札です。ご自身の身を少しでも守れるようになりたいといっておられましたので、少ないですが、お作りいたしました。お守りだと思って持っていただきたいのです」

珠「美鶴ちゃん、ありがとう」

美「いえ、玉依姫さまのためです。礼をいわれるほどでは――」

遼「――そうだな。そんな物、こいつには必要ない」

珠「ちょっと、遼!美鶴ちゃんに失礼でしょ!」

美「いいんです。この人になにいわれだって私気にしません。それよりあなたに渡したお札、早く珠紀さまにお渡ししてください」

遼「嫌だ。こいつには必要ないといったはずだ」

美「では、返してください!」

遼「どうせ、返したところでこいつに渡すつもりなんだろ。そうはさせねえ」

美「ですから一体あなたはなにが――」

お「――たまき、護る!」

珠「おーちゃん!?」

お「ニーっ!」



結局、おーちゃんのおかげで二人の言い争いは一時休戦した。

遼は、結局なにかしたかったのかな?



珠「遼」

遼「なんだ?やっと俺に喰われる覚悟ができたのか。待ちくたびれたぜ」

珠「違うから、迫ってこないでよ」

遼「チッ」

珠「舌打ちもしないでよ」

遼「で、用件はなんだ」

珠「うん、その、なんで美鶴ちゃんのお札渡してくれなかったのかなって」

遼「……そんなことか」

珠「そんなことって」

遼「珠紀、お前は俺の、俺だけの主だ。そして、俺はお前だけの守護者だ」

珠「う、うん」

遼「だから、あんな札が無くたって、お前は俺が護ってみせる」

珠「……うん」

遼「だから、珠紀、お前はずっと俺だけの主でいろ。ずっとこの俺が護ってやる。お前のことを一生かけて……」



遼が触れた手は暖かくては、この人になら私は全てを委ねてもいいと思った。


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