マフラー(斎千)
この頃の京はすごい寒さで、お前はとても寒そうにしていた。
それでも、父である綱道氏を捜すために、俺たちと一緒に巡査に出ている。
外に出てからずっと手をさすっては、息を吐いての繰り返し。
余程寒いのだろう。
雪「この頃は特に寒いですね」
斎「そうだな。近々雪が降りそうだ」
雪「あの、斎藤さんは平気そうな顔してますけど寒くはないんですか?」
斎「寒くない、といえば嘘になるが……お前ほど寒くはないだろう」
雪「そうなんでしょうか?」
斎「ああ、鍛えているからな。それに一応隊服を羽織っている。お前もなにか羽織ればいいんじゃないか?」
雪「そうですね。今後はなにか羽織る物着ることにします」
斎「ああ、そうしろ」
会話に一段落するとまた手に息を吐いていた。
きっと話していた間は気が紛れていたが、再び寒さが襲いかかってきたのだろう。
しかし、次の瞬間千鶴は、さするでもなく、息を吐くこともせずにただ黙って、そっと自分の胸の前に手をかざしていた。
雪「あ――…」
しばらくすると小さな声を一言だけ発した。
見てみると、かざしていた千鶴の手に一粒の白い粉が落ちていた。
雪「――やっぱり。見てください、斎藤さん。雪です」
斎「どうやら降ってきたようだな」
雪「どうりで寒いわけですね」
そして、先程よりも慌ただしく手に息を吐いていた。
斎「……そんなに寒いか」
雪「はい。こんなこというのもあれですけど、今日は早めに切り上げたいです」
斎「そうか。しかし、これは隊務だ。どんな状況であろうと私情は許されない」
雪「はい、わかってます。すいません」
斎「だが、そのかわりに、これを貸してやろう」
俺は首に巻いていた物を千鶴の首にそっと巻いた。
斎「これで少しは暖かくなるだろう」
雪「は、はい。あの、ありがとうございます。でも、斎藤さんはよろしいんですか?」
斎「問題ない――」
――お前が暖かいならそれでいい。
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