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resemblance
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「まあ、日が暮れてからは余りで歩かない方がいいんじゃないかな」

「じゃあ急いで飯食いに行きましょうよ」

「しつこいね…」

ジャーファルは根負けして席を立ち、シャルルカンは嬉しそうに笑う。

二人して宿を出てすぐ近くの食事処に入れば、さっきシャルルカンの言っていた殺された子供の噂が聞こえて来た。

「血を抜かれていたらしい」

「食い付かれた跡が」

「貴族の子」

そんな声が耳に届き、ジャーファルはまさかと目を眇める。

屠った、食った、と言葉が続いていて、眉根を寄せると、シャルルカンは不思議そうにジャーファルを見た。

「どうしたんすか」

「なんでもない。食べたら戻ろう」

まさかと思う。

シンドバッドは捕食を酷く拒んでいた。

ジャーファルを近付けまいとあれだけ頑なだったのに、堂々とこんな場所で食事をするだろうか。

考えている時同時に湧いたのは恐怖ではなかった。

――どうして自分じゃないんだろう。

自殺願望ではない。

ただ純粋に悔しく思うのだ。

食事をすることで辛い目にあって来たのだろうことはもう分かっている。

今も、一人でいるのだろうか。

食事をしたことを後悔しながら。

こんな風にジャーファルの感情が溢れてしまう日、夜が更けるとシャルルカンはそっとジャーファルのベッドに入って来る。

ジャーファルも黙ってそれを受け入れた。

大人に比べてまだ二人とも小さな体で、ベッドを狭く感じることはない。

背が僅かにくっついて、温もりが伝わり、またうっすらとあの人の冷たい体を思うのだ。

普段煩いシャルルカンはこういうとき何も言わない。

ただ、黙って傍にいる、まるで、飼い主が傷ついていることを敏感に察する猫のように。

けれどそれでは埋まらなくて、眠れなくて、ジャーファルはシャルルカンの寝息を確かめてからそっとベッドを離れた。

何となく向かったのは子供が殺されたと言う橋の袂。
朝を迎えるまであと僅かと言うところで、人に会うこともないと思い、夜着のままジャーファルは橋の上を見つめた。

が、人がいた。

黒尽くめの男が二人。

何か橋の上に降ろしている。

酷く良くない予感がして、ジャーファルはそっと闇に紛れるように気配を殺した。

あれは何だ。

荷物のように置き、男二人はそれに向かって何か手を動かしている。

――十字を切った?

恐らく、手は男の胸や額を通る軌道で十字を切り、それが終わればジャーファルの方へと向かって来る。

ジャーファルは更に気配を殺し、彼らが通り過ぎるのを橋の袂の木の裏側で待ってから、そっと彼らが置いて行った荷物に近付く。

「…ひどい」

荷物などではない。

青白い顔をした、子供だ。

それは、ひと目で既にこと切れていることが分かった。

着ている物の華美さで、貧困層の子供でないことが知れる。

幾ら人の死についてドライな考え方しかできずとも、これが酷く残忍な事であることは分かる。

殺して、わざと橋の上に打ち捨て、この子供が苦しんだこと示すように、表情に安寧はない。

見開いたままの瞳は、恐怖を露わにしていた。

ただ呆然とその苦悶の表情を眺めていたが、ジャーファルははっとして、衣服の乱れに目を凝らす。

申し訳なく思いながら、死者の首元を寛げたのは、僅かに青黒い跡が覗いていたからだ。

昨日の噂と同じ、噛まれた跡。

牙が食い込んだ跡のように、見えなくはない。

二本の犬歯が食い破ったかのように見える、その周りが酷く鬱血していてはっきりはしないが、これだけ鬱血しているのだから、何にせよ、生きている間にされたことだろう。



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あきゅろす。
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