必要不可欠なもののひとつ
「あ、」
はっ、はっ、と荒い息使いが王の寝所で響く。
ジャーファルは苦しそうに喘ぐものの、それでも最初の時よりは慣れ、自ら腰を押しつけるような仕草をする。
今がきっと一番正直な瞬間なのだろうと思いながら、ゆるゆると狭い場所を拓いた。
「ひ、」
「ああ、すまん」
「い、いえ、わ、私の体が不慣れで、」
何となくジャーファルのいい場所を知ってしまったせいで、無意識にそこを強く穿つと、ジャーファルは怯えたように身を竦ませ、同時に肌を粟立てる。
しかし、前回のように口を押さえたりえずいたりはしていなくて、ジャーファルの中でも変わったものがあるのだと知った。
「すぐに慣れる」
「き、気持ちは良いんですよ…?」
「分かってる」
「シンは…?」
潤んだ瞳に問われ、一瞬ぎくりとする。
自分の体で気持ち良くなって欲しいと、望んでいる瞳。
していることは即物的なセックスだというのに、突然この行為が儀式のように思えた。
同じ釜の飯を食らい、同じ荷を背負い、そのために時には辛い仕事を二人でこなし、快楽さえ共有して、一日の終わりを一緒に迎える。
それがどちらの望みであるのか、熱に浮かされた思考では判別できない。
分かったのは、自覚も、恋人とかそういう肩書きも、何もいらなかったということだけ。
「俺が好きか、ジャーファル」
「…そう、言っています」
とても可愛くて、可愛くない、つんとした声の愛おしい言葉。
「それなら、とても気持ちが良くて、幸せだ」
ジャーファルの濡れた瞳が見開かれたと思うと、ぼろ、と大粒の涙が零れた。
きっと今、望みさえ共有している。
END
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