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必要不可欠なもののひとつ

「ちょ、ちょっと待って下さい」

「んー?」

「あの、三日に一晩って、その、本当にこういうことを…?」

ジャーファルは肩の傷など気に止めた風もなく、次の日から普段の業務に戻った。

そして、言い付けを守って、三日目の夜には本当に寝所に訪れ、シンドバッドがお願いや命令を繰り返し、裸に向いて組み敷いたところで、はっとしたように疑問を口にする。

「慣れろ」

「はあ…」

「こういうことをすることに慣れて、愛されることに慣れた頃にはそれが日常になるさ」

「そういうもんですか…」

ジャーファルは分かったような分からないような、微妙な顔をしているものの、ゆるりと体の力を抜く。

片腕がだらりとベッドから落ちた。

しかし、投げやりな感じでもない。

瞳に浮かぶ僅かな期待や、まだ濡れた髪は、疑問を口にした割に、ちゃんと心と体の用意をした証でもある。

言い訳しながらでもそれが日常になるなら、それでいい。

命令であれば、嫌なことにはノーと言えるし、黙って従うならそれは正しかったということ。

ジャーファルの望みを的確に命令して行くというゲームに興じるつもりにさえなれる心の余裕は、従うジャーファルの仕草や視線が与えてくれるものだ。

「そう言う日常を俺が望んでいるからな」

「王の望みの割に規模が小さいです」

「人ひとりを思うようにするんだ、この上なくでかい事をしてる気分だがなあ」

笑いながら組み敷いた体を撫でた。

腕を、肩を、胸を。

「あ」

「…なんだ?」

「そういえば、今日お渡しした書類、見ましたか」

「ああ、見た。明日の朝一でいいんだろう?」

突然始まった仕事の話に多少なりとも驚きながら、白い脇腹を撫でていると、ジャーファルは眉根を寄せるほどではないが一瞬目を閉じるのを我慢するような仕草をする。

それで、ジャーファルが体に降って来る感覚を逃そうとしているのだと分かった。

分かっていて、胸元まで撫で上げる。

「ええ、それで」

「なら、ちょっと黙ろうか、ジャーファルくん」

怯えさせないように、ことさら柔らかな声で言えば、ジャーファルは頷き、それから、シンドバッドの悪戯な手に視線を向けた。

何をされるのか覚えておこうとするように、じっと見ているから、わざとらしく胸の頂きに親指を引っ掛け、小刻みに震わせる。

とうとう眉根を寄せた、その眉間に、唇を落とした。




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