休日の過ごし方
叫んだことと、がさつなシンドバッドの移動のせいで今度は軽い頭痛を起こし始めるも、調子が悪いと言うところまで行くことなく、ジャーファルの私室に運ばれる。
ベッドに下ろされ、勝手にシンドバッドの手がクーフィーヤを解き、ついでに汗までぬぐわれて。
更にまだ何かしようと動く手を掴んだ。
「もう十分です、本当に。ただの寝不足なので」
言葉ははっきりしているものの、微妙に焦点がずれるジャーファルに、シンドバッドは苦笑して頭を撫でる。
その手にほっとするのは刷り込みだ。
子供のころから幾度となくこうして宥められてきたが故に、安心感に逆らえない。
「ちゃんとした休みを用意しますから」
「不要だ。十分楽しんでいる」
「それでは気が済みません」
気丈に言えば、シンドバッドは僅かに逡巡してから、うっすらと笑みを浮かべ、ジャーファルは本能的にその笑みが決していいものではないことに気付く。
「じゃあ、休みの代わりを貰うかな」
なんなりと、その人ことはジャーファルの口から出て来なかった。
頷いてはならないと頭痛を酷くするような警鐘が鳴っている。
イエスの代わりの何かを言おうとして開き掛けた口にむちゅっと何かくっついた。
何かは分かっているが、分かりたくなくて思わず目を閉じると、シンドバッドはどう受け取ったのか、啄ばむように、数度口吻ける。
「あ、…や、やめ、…」
文句を言おうと勝手に唇が動いたところでシンドバッドは気にすることなく口吻けてくるが、それは深まっては来ない。
最後にべろりと唇を舐められはしても、そのまま顔が離れた。
「あ、あ…」
何をするんですか!と言いたいが、上手く言葉が紡げず、恐らくは紅潮しているだろう顔を袖で隠した。
「休暇の代わりは貰った。ゆっくり寝ると良い」
もうさっさと言う通り寝た方がいい。
これ以上起きていたら何をされるか分かったものではないのだ。
しかし、頷いて見せるも、シンドバッドが離れる様子はなく、怪訝に思ってから、はっと気付いて、手を離した。
子供でもあるまいし、世話を焼くのを止めるために掴んだシンドバッドの手をそのまま引き止めるかのように掴み続けているなんて。
シンドバッドが離そうとすればすぐ気付いたのに、彼が握られるがままになっているのが悪い。
もう殆ど八つ当たりのように睨んだが、シンドバッドは驚くこともなく柔らかく微笑んで部屋を出て行った。
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