愛情の形○△□ 余所余所しいと言っても、ジャーファルは仕事人間であり、今日もちゃんと執務についている。 わざわざ隣の机に仕事を持ちこみ、判子を押す作業しながら時折様子を見るに、ずっと眉間にしわが寄ったまま。 まだ何をしかけたわけでもなし、そう警戒することはないのに、と思わなくもない。 もうちょっと可愛い方がさっさと好きになれる気もするのだが、どうにも可愛くない様子がデフォルトのようで、それもギャップと思えば、と考えていると、いつの間にか手が止まっていて、ジャーファルがじとりと睨んでいた。 「し・ご・と!して下さいよ」 「してるだろう?」 「手が止まってます。明日倍になって泣いても知りませんから」 「…可愛くないな。もうちょっと可愛くしたらどうだ」 「基準が分かりません。男ですし、可愛くなくていいんです」 基準。 そう言われてみれば曖昧である。 小言を言ってても可愛い時は可愛いし、ともなると、自身は何をもって可愛いと思っているのだろうか。 「休み、」 「うん?」 「休み取られますか、二、三日。根を詰められすぎたんでしょう」 そう言われて、シンドバッドはまだ遠いなと思う。 つまり、女官を食われるのは困るので外で遊んで来いと言うことだ。 「君も行くならそれでも構わないが」 「お供しますよ、何かあったら大変ですから」 「それで、俺が女を抱く間待っていると…?」 「…ええ」 平静を装った声のあと、唇が引き結ばれ、ぐっと堪えるような顔をする。 自分で振っておいて傷つくとは何事だ。可愛くない。 「じゃあそうしようか」 余りに可愛くないので少しからかうつもりで言ったのだが、ジャーファルは勢いよく立ちあがり、怒って出て行ってしまった。 なんだ可愛いじゃないか。 |