[携帯モード] [URL送信]
彼女が俺を残して卒業する日








ふと窓の外に目を向ける。
積もった雪が溶け始め、様々な色が顔を出し始めた。
もう直ぐ冬の寒さが眠りにつき、春が目を覚ます。
どんなに足掻いたとしても、時間は待ってなどくれない。
だから冬から春になる時期は嫌い。
もう直ぐ別れが来てしまうから。






「翼君?」



そんな事を考えていると、後ろから声がする。
振り返ると、月子がひょっこりドアから顔を覗かせていた。



「どうしたんだ、月子?」


「用事はないんだけど、翼君の後ろ姿が寂しそうだったから」


「ぬぬぬ、俺の後ろ姿が寂しそうだったのか?
そんな事はないぞ。
俺は元気一杯なのだ!!
今日も新しい発明のアイディアが浮かんだから、作ってる最中なんだぞ!!
ほら、これ。
ん、違う、これじゃないな。
こっちだ!!」



差し出してみると音をたてて爆発した。



「ぬがー、爆発した!!」


「翼君?」


「今のはちょっと失敗しただけで………」


「翼君!!」


「ど、どうしたんだ、月子?」


「ねぇ、無理しなくて良いんだよ?」



その言葉に頭の中が真っ白になる。
君には笑っていて欲しいのに、そんなに寂しそうな顔をするの?
俺、笑って送り出そうって決めたのに。



「む、無理なんてしてないぞ?」


「そんなの嘘だよ。
顔見れば分かる」



君の真剣な眼差しが胸に刺さる。
あぁ、どうしていつも君には気持ちを隠せないんだろう。
困らせたくないのに。



「………俺、決めたんだ。
笑顔で、卒業する月子を送り出すって。
卒業しても大丈夫だよって、月子を安心させたくて」


「ありがとう、翼君」


「全然ダメだよ。
やっぱり俺は月子を困らせてばっかり」



俯いていると、ふわりと包み込まれる感触がする。
びっくりして顔を上げると、俺は君に抱き締められていた。



「そんな事ないよ。
ありがとう、翼君」


「月子、本当は卒業なんてして欲しくない」


「うん」


「ずっと一緒に居たい」


「うん」


「離れ離れなんて嫌だ」


「うん」






なんでだろう。
言葉が溢れ出して止まらない。
こんな事言うつもりじゃなかったのに。
抑えが効かなくなった水が溢れ出すかのように、俺はどうしようもない思いを君にぶつけた。
誰が悪い訳じゃない。
何も言わず受け止めてくれる君に、俺は甘えてしまったんだ。
本当にカッコ悪い。









「落ち着いた、翼君?」


「ごめん、月子」


「良いんだよ、翼君?
何かあったら我慢しなくていいの。
喜びも悲しみも半分こしよう?
私達、恋人でしょ?」


「月子………」



俺、ずっと我慢しなきゃって思ってた。
でも本当は違ったんだな。



「翼君、大好きだよ」


「うん、俺も。
俺も大好き!!」




彼女が俺を残して卒業する日






(その時は、
無理やりじゃなく、
心からの笑顔を君に送るから)









for→君色シンドローム


今回は素敵な企画をありがとうございます、流季ちゃん!!
皆様と企画に参加出来たこと、嬉しく思っております。
今回、提出がぎりぎりになってしまって申し訳ないです。
その分愛は込めたつもりですので!!
これからも君色シンドローム、応援していますからね(^^)
簡単な挨拶ですみません。
それでは、失礼致しました。














[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!