俺らは大会のためにここに来て、大会が終われば帰る。 それだけのはずだった。 「もう直ぐ夏も終わってしまうんやな………」 今まで長いとしか思っていなかった夏は駆け足で過ぎ、秋になろうとしている。 暑いのは苦手だが、これほど夏が終わらなければいいと思ったことはない。 そう、今年の夏は特別過ぎたから。 「あかんなぁ………」 太陽の光に目を細めながら空を見上げ、そっと手を伸ばした。 「何してるんですか、土岐さん?」 そんなことをしていると小日向ちゃんがひょっこり顔を覗かせる。 ああ、どうしてこうも会いたいタイミングで現れるんだろうか。 本当にかなわへんな。 「んっ? 太陽が誰かさんに似てたから、手ぇ伸ばしてみたんや」 「誰かさんって誰ですか?」 「なんや、もう気づいてると思ってたんやけど」 「わ、分かりませんよっ!!」 「そうなん? なら内緒にしてまおうか」 「気になるじゃないですか!!」 「ふふ、やっぱり怒った小日向ちゃんも可愛いなぁ。 そない気になる?」 「はい!!」 目を輝かせながら言うものだから、自然と笑みがこぼれる。 俺、今どんな顔しとるんやろう。 きっと腑抜けてるんやろうけど。 「太陽が小日向ちゃんみたいやったんや」 「え?」 「キラキラ輝いて、俺を照らしてくれる。 小日向ちゃんそのものや」 「そ、そんなことないですよ」 すると小日向ちゃんは顔を真っ赤にさせて後ろを向いてしまった。 そんなことしたら、後ろから抱きしめたくなってしまう。 今の感情に流されるのは簡単だ。 けれど、俺はずっとここに居られるわけじゃない。 もう直ぐ神戸へと帰らなくてはならない。 そんな気持ちがブレーキをかける。 「今日の土岐さんはなんだかいつもと違いますね」 「そう? いつもこんなんやで」 「いいえ。 なんだか寂しそう、です」 「………そない心配してくれて嬉しいわ。 小日向ちゃんが心配してくれるなんて、俺は幸せ者やね。 ありがとう、小日向ちゃん」 「土岐さん………」 「………あかんなぁ」 「えっ、今なにか言いましたか?」 「いや、ただの独り言や、ただの、ね」 “離れとうない” それは彼女に言いかけた言葉。 口に出したらどれほど楽になるだろう。 けれど、やっぱり小日向ちゃんには小日向ちゃんの居場所があるし、俺だってそうや。 言っても困らすだけやろうな。 太陽は小日向ちゃんに似ている。 キラキラ輝いて俺を照らすけど、手が届かない存在。 それなのに焦がれてしまうなんて。 ごめん、愛してるよ (俺も諦めが悪くなったもんやな) for→Triangle様 今回も企画に参加させて頂き、ありがとうございました!! また流季様の企画に参加出来たこと、嬉しく思っています!! 土岐様は好きなんですが、いざ自分で書くとなると難しいですね……… エセ土岐様で申し訳ないです。 その分愛は込めましたから!! それでは、本当に素敵な企画をありがとうございました。 失礼致します。 沙奈 [戻る] |