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こぼれた吐息(流川)









ダムダムと体育館にボールを弾ませる音が一つ響く。

日が昇り始めたばかりの早朝は初夏とはいえ冷え込む。



流川はそんな中でボールを床に打ち付けながらゴールに華麗にシュートしていた。

何本いや何百本練習しただろうか分からない。
流川の額からは汗が幾重を流れ、頬を伝って滴る。





「おー、やってるねぇ」





砂利を踏む音が背後の入り口から聞こえ、明るい感心するような声に流川はボールを片手に振り返った。

こんな人がまだ寝ているだろう時間に学校にやって来るのは、流川が知る限りは一人しかいなかった。





「おはよ、流川」

「……っす」





部活時のお馴染みの服を着た棗は片手を挙げてヒラヒラと手を振り、笑顔を向けた。

部活の後の練習に何度か付き合って貰ったことはあったが、桜木にしか興味を示さない彼女がこんな時間にやって来るのは初めてで、流川は内心驚きを隠せなかった。


肩を微かに上下に動かし呼吸を整えていると、棗のキュッキュと床を歩く音が近づいた。





「はい、お疲れさん」





ハッとした時には流川は棗から投げて寄越されたドリンクを咄嗟に受け取っており、

あまりの周到さに流石だと思わずにはいられなかった。





「水分はちゃんと摂らないと」

「む」

「まぁ、どうせ流川のことだから練習に夢中になりすぎてると思ってたけど」





練習手伝うよ、と笑う棗はテキパキとボールを拾ってカゴに戻し、ゴール下に移動。

流川はそのままドリンクをコートの端に置くと首を縦に一つ振った。



棗はシュートを決める流川の姿を見て、やはり親友だけでなく仙道や他の選手とは違った興味を惹かれるのを改めて実感した。

バスケに対するひたむきな心と熱意だけでなく……そう、もっと違うもの。





「……」

「ん、どうかした?」

「何でこんな時間に来たんだ」

「え?」

「野郎はいないんだぞ」





ボールを手にした流川はじっと棗を見据え、棗は首を傾げてカラカラと陽気に笑った。





「んー、流川の朝の自主練を観察したかったから、かな?」

「……今日俺がここに来てなかったかもしれねぇんだぞ」

「何となくだけど、今日は流川がいるような気がしたんだ!」





あっさりと答えた棗に対し、流川は無言になった。

何か変なことを言ったのかと焦ったが、突然ボールがパスされて目を丸くさせた。





「……次、ラスト」

「あ、はーい」





先程よりも流川の目に力が入ってるように見えた棗は、十分に気合いが入っているなぁと感嘆した。





「……ろ」

「え?」





棗からパスを受けた流川はそのまま数度ドリブルしてから一直線にゴールへと飛び……そのままボールを直に叩き込んだ。





「あ……」





彼の視線は棗に向けられ、飛び散る汗が朝陽で光るその姿に棗は彼が着地するまで目を奪われた。

流川はぐいっと手の甲で顎に伝う汗を乱暴に拭い、呆然とする棗を見下ろした。





「由利」

「……」

「おい」

「はっ……!
わ、私ったら思考が一瞬止まっちゃった!
流川があんなダンク見せるからだよー!!」

「……」

「あーっ!
もうそろそろみんな登校してくる時間だね!
モップ掛けとか片付けとかあるから練習終わりにしないと!」





時計を見た棗は慌て、流川の返事など待たずにボールをせかせかと拾って片付け、モップを手にバタバタと走り出す。





「……鈍い奴」





だが流川はいつもより取り乱しているように見える棗の様子を見て愉悦を感じ、

早く着替えて慌てる彼女の手伝いをしようと思った。



一方、棗は床を磨きながらあの交差する視線を思い出し、どういうわけか心臓が速いことに戸惑いを隠せずにいた。





「な、何なんだ……この高鳴りは…!」





胸に手を当てて考えても、深呼吸をしてもそれは収まることはなく、いつになく真剣な眼差しだった流川を思い出し、ただ困り果てるばかりだった。






高鳴る鼓動



(み、水戸に相談してみるかな……)

(む……野郎の名前が聞こえた気がした)

(わっ、いきなり隣に並ばないでよ、びっくりするなー!)






流川のダンクを決めた後の息を吐く時の表情で見下ろされて取り乱した夢主〜的なことを書きたかっただけ(^q^)
完全に俺得です


2012/03/19

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あきゅろす。
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