− 藤真が出てきたことにより、同点から一気に4点差に引き離されてしまった湘北。 せっかくリバウンドを取った桜木もあっさりとボールを奪われてしまい、インテンショナル・ファールを貰ってこれでこの試合で3つ目のファールとなった。 相手が海南の次に強い翔陽と言うことのプレッシャーや、これまで戦ってきたところより蓄積される疲労によりメンバーの体力はどんどん削られていく。 特に2年のブランクがある三井にとってはかなり応えている様に見えた。 安西はここでタイムアウトを取った。 藤真がカットインで切り崩し、湘北ディフェンスを分断する。 パスを受けて4人の長身軍団が決める。 (4人をマークしても、藤真さんが1人で決めちゃう……) 「まだまだこれからよ!」 「そうだ、6点差なんて1チャンスで逆転できる」 そう彩子たちが声を掛けるがメンバーは体力的にも精神的にも応えているようだった。 「さて、試合前に君たちに言ったことを覚えていますか?」 「……勿論です」 ――俺たちは強い! 彼らの強い返答を聞くと安西はよろしいと言うだけで、彩子と棗の肩を叩いて頷く。 「いいか、ここまで来たら去年までの成績は関係ねぇ。 目の前の敵が誰だろうと、そいつらを倒すだけだ!」 「このリードを守ろうなんて考えるな。 攻めて攻めて、湘北に俺たちの力を見せつけてやろうぜ!」 湘北も翔陽も気合が十分だった。 『三井さん、大丈夫ですか?』 「あぁ、心配ねぇよ」 ベンチに座って息が荒い三井に追加のドリンクを渡しながら声を掛ければ、大丈夫とは言っているが肩で大きく息をしているのを見れば辛いのは一目瞭然。 流川と桜木は7番と8番をマークするよう赤木に言われ、彼らを見ればガンたれていると対抗心を燃やした。 「奴らはお前らよりデカいが、お前らの方がジャンプ力は上だ。 制空権を取れ、花形は俺に任せろ」 「ゴリ」 「ゴ……キャプテン」 あ、ゴリって言いかけた。 しっかり見ていた棗は思わず笑いそうになったが、ふと翔陽のベンチを見てドキリと心臓が跳ねた。 距離がある為に定かではないが、勢いに乗って生き生きとしている藤真と目が合ったような気がした。 現に彼は初めて会った時のような余裕ある笑みを向けていた。 (翔陽は湘北などには負けない。 それを見せてやる、棗) (まだ勝負はこれからです。 絶対に逆転して見せますよ、藤真さん) 「……」 『あでっ!?』 目で会話をしているような棗を見た流川は気に入らなかったのか、頭を鷲掴んで自分の姿を棗の視界いっぱいに入れさせた。 首が痛かったのか目を白黒させた棗。 『もう、痛いよ流川』 「またよそ見してやがるから」 『え? 私はただ……イタタッ!』 「向こうを見る必要はねぇだろ」 藤真を見ていたと口を開きかけてもう1度視線を向けようとすれば、また頭を掴まれて元に戻される。 敵にガンたれられて癪に障ったのが原因なのか不機嫌そうな流川。 困ったように後頭部を掻いていると、気づいた桜木が固定された手を引き剥がす。 「コラ流川ー! テメェ棗に何しやがる!」 「うるせぇ、どあほうが」 『あーもー、今は試合に集中してよ2人共。 いいとこ期待してるよー』 「任せとけ、この天才に!」 「っす」 パンパンと喧嘩勃発しそうな問題児2人を宥めた棗はコートに行くよう軽く手を叩く。 「よーし、行くぞ! 勝って決勝リーグだ!」 「「「おう!」」」 両者気合十分でコートに向かう。 残り時間は10分弱。 このまま翔陽が点差を開くか、湘北が追い上げて逆転するか……。 これからの試合に固唾を飲み、ビデオを持つ手に力がこもった。 冷めない気合 (あー、ドキドキしてきた) ((少し目を離せばああなんだ、どあほう)) [*前へ][次へ#] [戻る] |