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秘密兵器、出陣





後半戦になっても湘北の勢いは止まらずにどんどん追い上げていく。



耐えかねた田岡はタイムアウトを取り、彼の表情に笑みは既になかった。




ここでも桜木は偵察と言って陵南チームのところに行ってそば耳立て、越野や田岡と一悶着が起こる。

ついにはやり取りを見て笑った仙道にまで絡んでしまう。



赤木の拳により怯んだ隙を突いて全員で桜木をイスにロープで縛りつけて事態は収まる。





「すまないな、仙道」


「いや」


「田岡先生、大変失礼致しました」


「んん、まあいいが……赤木君、あの男は部の為にも辞めさせたほうが良いと思うぞ」





試合は再開され、彩子は縛られた桜木に頭を冷やせとコールドスプレーをかけた。



このまま何事もなく大人しくおさまってくれれば良かったが、仙道がシュートを決めた後に桜木を挑発したことでそうはいかなくなった。

見事挑発に乗った桜木はロープを自力で引き千切ってまた勝手にコートに入ろうとする。





『お願いだからこれ以上暴れないでよ、桜木ー!』


「止めてくれるな棗!
挑発してきたのはアイツだ!」


『そんな安い挑発に乗ったらダメだってば!』





後ろから桜木にしがみついてこれ以上コートに行かないよう引っ張るが、流石の棗相手でも今の桜木と止めるのは至難の業だったよう。


助けて赤木さーん!!




ホイッスルが鳴ってダメかと諦めた時……。






「座ってろぉぉ!!」






火山が噴火したかのように赤木は怒鳴り、桜木はすんなりとベンチに戻る。

解放された棗はジトリと仙道を見て何てことをしてくれるんだとばかりの視線を送る。





「全く、棗も苦労が絶えないな」

「それにしてもさすが怪物」

「あの花道を一発で黙らせるとはな」

「ゴリ、恐るべし」





それからの試合は次第にエキサイトし、高宮たちは桜木が原因ではないのかとふと疑問を溢した。





すると安西からウォームアップをしておくよう言われ、それすらも知らない桜木はガンたれたことで彩子に得意のハリセンチョップを食らった。

棗は少し不安に思いながらも頭を擦る桜木の背中を叩いて笑った。





『秘密兵器の出番が近いんだよ、桜木!
良かったね!』

「で、出番……!」





出番と聞いて桜木はアップとしてボールハンドリングを凄まじい速さでやり、周りはそれに目を奪われた。




だが少々やり過ぎたせいで汗をかいたのか彩子からタオルを受け取って試合を見つめる。

隣に座った棗はだんだん緊張しているのか冷や汗を滲ませてくるのを見て、桜木にしては緊張してきたのかと内心笑った。



このまま点差を維持していけばいいが、桜木が入ったことでさらに差が開いてしまうのかもしれない。

それを本人は考えたくとは思うが。






『固まり過ぎ、桜木』

「う、うるせぇ! 俺はちっとも緊張してねぇぞ!」






――ホイッスルが鳴り、オフェンスチャージングの声が上がる。

チャージングを取られたのは魚住。





「あぁ!!」






聞こえてきたのは驚愕の声、コートを見れば赤木が魚住の肘が当たった時に出来たのか顔から血が流れていた。

レフリータイムを取り、彩子が直ぐにタオルを持って赤木の元に向かい、桜木は呆然とそれを見ていた。




赤木は医務室に行き、桜木が彼の代わりにコートに入ることに。

桜木が入ってきたことに陵南は視線を集め、当の本人は頭の中が真っ白になって仙道が声を掛けたのにも気づかず手と足が揃って歩く。





(あぁダメだ、完璧緊張して頭の中が空っぽって顔してる……)





嫌な予感がして仕方がない棗だったが、その予感は無情にも的中し、体はガチガチで最悪状態。


終いには流川がパニくる桜木を蹴っ飛ばし、

いつもの喧嘩が始まるなど最早試合のどころではなくなった。




だが下に降りて来た水戸たちは桜木の動きが流川との喧嘩で良くなってきたと喜び、言われてみればそうかと納得。





「おい木暮君、こんなんじゃ試合放棄とみなすが」

「そ、そんな殺生な…」

「ちょっと待てぃ、ジジイ!」





いつの間に喧嘩が終わったのか、田岡に強烈チョップを入れる桜木。

桜木は緊張が解れたのか、さっきとは顔つきが変わっていた。





「こっからが本番だ、よく見てやがれ!」






桜木、始動


(……偉そうに)

(流川…テメェ)

(頑張れ桜木ー、流川ー!)


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あきゅろす。
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