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不良の保護者





4月――春。


花道率いる桜木軍団は神奈川県立湘北高等学校に入学し、新たな学生生活を送っていた。





「よぉ、洋平。
どうだ花道の様子は?」





1年7組にやって来た水戸洋平以外の桜木軍団。



水戸はやれやれといった感じで言葉を返す。

視線の先には窓の外をずっと見て黄昏ている桜木の姿。





「まだ立ち直ってねぇな。
自分の殻に閉じこもってるよ」



「高校入ってから立ち直ると思ったんだけどな」



「どうもアイツは性格が内向的なんだよな。
あんな赤い髪してる癖によ」





大楠は禁句である“バスケット”を軽々しく口にし、頭突きを受けた。


それから“バスケット”に似た言葉に反応し、クラスメイトにでさえも頭突きをぶつけた。



手の付けようがない桜木に呆れていると。





「ん?棗はどうした?
アイツのことだから一緒に来ると思ってたけど」





水戸はいるはずの姿が見当たらないことに目を丸くさせて首を傾げる。





「あー、アイツならいつものところで寝てるぞ」



「またか。
ったく、花道を俺らより宥められるのはアイツだけだってのに」



「アイツはアイツで変わってるからな」





4人の話題の彼女がいない間、

見事失恋から立ち直った桜木がスポーツマンになると廊下で筋トレを始めたのは数分後の話。











――





春色の風が人の心を心地よくさせて眠気を誘う。



貯水タンクの裏にて、壁に背を預けて静かに眠る少女。

制服はまだノリがついて真新しさを主張し、柔らかな風がそっと長い黒髪を撫でる。




少女の傍らにはお気に入りのカメラとスケッチブック。





由利棗――桜木軍団と中学に入学した時から、経緯は分からないが仲が良い少女。

今では桜木の保護者のようなもの。





『ん……おぉ、次の授業が始まるや』





退屈な授業をサボり、左手首に巻かれた時計を見てそろそろ教室に戻ろうと制服についた誇りを払い、荷物を持って屋上を後にする。





『わっ』


「……」





そんな矢先、ノブに手をかけたところでドアはゆっくりと開き、自分よりもはるかに大きい身長の青年が目の前に立ちはだかった。



お互いに扉の向こう、しかも真ん前に人がいるとおもっていなかったのか一瞬目を見開き、棗はごめんと言って先に青年を通す。



青年は数拍してから既にこちらを見ていない棗を見下ろして足を踏み出す。





特に会話もなく2人は擦れ違った。










自分の教室、1年10組に足を踏み入れた棗は次の授業の支度を始め、予鈴が鳴るまで机に自らの腕を枕にして突っ伏した。



そして授業が始まる中――棗の隣の席は空席のままだった。







それぞれの始まり


(それにしてもさっきに人デカかったな……)



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あきゅろす。
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