スラムダンクがやりたい
放課後。
漸く解放された棗は水戸たちと下校すること
に。
桜木なら一週間でもう辞めていると誰も(棗以外)が考え、せっかくだから少し見ていこうと体育館に寄る。
すると自分たちの目的方面から女子黄色い声が聞こえ、入り口のところに女子が群がっていることに気づく。
気になった5人は下の窓からこっそりと中の練習風景を見ることに。
練習する部員の中に棗は流川の姿を確認し、背中に目があるのかと思うくらいの凄いパスを丁度していた。
「流川か」
「アイツ、バスケじゃ県内で有名な奴だったらしいな」
「あの子たちはみんな流川が目当てらしいな」
ふと見れば周りと同じくらいに目を輝かせ、
嬉々として流川を見ている晴子の姿を水戸が見つけ、彼女もああ見えてミーハーなんだよなと言葉を溢す。
ミーハーが大嫌いな棗にとって、非常に苦々しく顔を引きつらせるしか出来なかった。
『赤木晴子が流川にああなら……』
「てことは」
コートの端でドリブル基礎をしている桜木。
傍らには帽子を被ったグラマラスな少女が立っており、流川を応援していた。
それを聞くと目つきがさらに最悪になるばかり。
「かなりキてるな」
「そろそろ花道は爆発すると見た」
「『言えてる』」
ここまで爆発していなかったのが不思議なくらいだった。
ところが、不機嫌になっていた桜木は次第に何かを思い描いていたのか顔が緩み、ハリセンで頭をぶっ叩かれた。
「おぉ、あのグラマラスなマネージャーも中々火に油を注いでるなぁ」
「俺は好みだな」
「んなこと聞いてねぇよ」
「……そろそろ来るぞ」
桜木は立ち上がると何を話してるかは聞き取れないが、次はボールハンドリングの基礎らしくマネージャーがやってみせた。
ボールがマネージャーから渡されると、桜木はもの凄い速さでボールハンドリングをマネージャーと同じようにこなした。
「凄いじゃんか、桜木花道!」
マネージャーはパシリと肩を叩き、練習をしてた部員たちも初心者とは見えないボールさばきに赤木に勝っただけのことはあると言葉を溢す。
調子に乗った桜木はコートに行こうとするが
赤木にドリブルを練習するよう言われ、それでも意地になって赤木を超えてコートに向かおうとするが、それは無意味に終わって床に額をぶつけた。
『……スイッチ入った』
「そ、そろそろ来るか……」
起き上がった桜木の額には青筋が立っていた。
「何で俺だけ隅っこでダムダムやってなきゃなんねぇんだ!!
もう我慢出来ん!!」
「やっぱし!!」
「さぁ俺たちの出番だ!」
「棗はそこで待ってろよ、危ねぇから!」
『あ、でもみんなが行っても……』
棗が4人を止めるのも既に遅く、水戸たちは完全に頭に血が上った桜木に頭突きを食らって床に倒れた。
やれやれと肩を竦め、次第に状況が悪化していく中、赤木がエスカレートしていく桜木の背中に蹴りを入れてその仕返しにキャプテンである彼にさえも頭突きを食らわせた。
見かねた棗は立ち上がって入り口から靴を脱いでゆっくりと歩いて入る。
『桜木』
沈黙の中に響く凛とした声。
誰もが出所を目で追い、桜木は棗の姿を捉えると目を見開いて怒りのオーラが微かに静まる。
当人は黙ったまま爆発した桜木を見据え、彼は棗の方へと…正確には出入り口へと向かった。
「コラ、何処へ行くんだ桜木!」
「帰る!
こんな詰まんねぇ部はもう辞める!」
「――この根性なしが!!」
赤木の言葉を背に受けながら歩き、棗のところに来ると気まずそうに目を伏せた。
棗は何も言わずに桜木の腕をポンポンと軽く叩くだけ。
晴子と目が合ったが……桜木はそのまま体育館を後にした。
その背中からは悔しさでいっぱいのオーラを纏っていた。
『……水戸、高宮、大楠、野間はいつまで寝てるの。
練習の邪魔になるから早く行くよ』
「あ、あぁ……」
『お騒がせしてすいませんでした』
棗は額に瘤を作って倒れている水戸たちに声を掛け、赤木や他の部員たちに小さくお辞儀をすると踵を返して体育館を去った。
(彼女を見て桜木花道のオーラが変わった。
あの子一体……)
「……」
桜木たちが去った体育館は、未だに静かなままだった。
爆発した思い
(チクショウ……っ)
(桜木君……)
(限界だったのね、桜木)
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