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「あー、えっと……。と、とりあえず、それだけ。今更むしかえしちゃってゴメンな」

「──……いや、別に、気にしてない」


 慌てて話を終わらせようとした彰だが、吉田の声にハッとして振り向いた。


(え!? 今、喋った!?)


 思わず目を丸くし、もっさりとした青年を凝視する。

 吉田は相変わらず表情が隠れていて、何を感じているのかわからなかったが、そんなことはもうどうでも良かった。


「よ、吉田……?」

「……何?」


 初めて聞いた吉田の声は予想外に滑らかで、耳に心地良く響く。


(うわぁ、うわぁ……!)


 異名高き吉田の初ボイスに、彰は驚きを隠しきれない。


(てゆうか、けっこーイイコエしてね?)


「……初めて、吉田の声聞いた」


 感動のまま呟くと、吉田はふいっとそっぽを向いた。


「……そうだっけ?」

「うん。すっげーイイコエしてんじゃん」


 彰と吉田を包む空気が柔らかくなった気がして、彰は吉田に笑いかける。


「なぁ、もっと喋れば? てか、喋ろうぜ」


 まるで新しいゲームを初めてプレイする時の様なわくわくした気持ちになりながら、彰は吉田の隣に腰を降ろした。


「もしよければさ、吉田のこと教えて」


 そう言って微笑む。何にせよ、さっまでの殺伐とした空気がなくなったのは有り難くて、ほっとした。


(良かった。意思疎通が図れそうだ)


 この際もう掃除はどうでもいい。教室はあらかたやっておいたし、新橋も、もう帰っていると思う。


(まぁ、後でメールくらい入れとくか)


 そう思って自己完結させ、彰は吉田の顔を覗き込んだ。


「なぁ、吉田ってさ────」









 話してみると、いろいろなことが分かった。

 吉田の愛読書に趣味、家族構成。
 そして何よりも、彰の今ハマっているゲームを吉田もプレイしているということで、かなり話がはずんだ。

 その他にも、吉田が地味、というかある意味目立つなりをしている理由も明らかになった。


 吉田は中学時代の時、あることが原因で徹底的に人間関係がダメになり、それ以来人間不信になったのだという。

 もうあんな目に遭うのはゴメンだということで、なるべく人の目に付かない様に、地味に過ごしてきたらしい。


「へー。吉田も大変なんだなぁ。うん、わかるよその気持ちは。人間関係って時々すっげーウザイよな」


 うんうんと頷き、彰はしみじみと語る。


「俺もさぁ、好きな子のことダチに相談した時とかさぁ。
 がんばれとか言っておきながら、相談したソイツがちゃっかりその子とつき合ってたりしてんだよね。
 あー、思い出したらムカついてきた」








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あきゅろす。
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