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臨吉/酸素不足の原因









 纏わりつくような重苦しさに、臨也は息が詰まるような感覚を覚えた。右手でマウスを操作しながら、左手で咽喉の具合を確かめる。目はディスプレイを見てはいるが、確実に捉えているわけではなかった。


 臨也が組んだ脚を下ろすと、ぎしり、と椅子が音を立てる。咽喉を触っていた左手は、落ちつきなく人差し指でデスクを叩き出す。


「止めてくれないかしら」


「何を?」



 侮蔑を混ぜた波江の声を聞いて、臨也は反射的に言葉を返しはしても意識は【どこか】へ飛んでいる。その様子に波江は呆れたように溜め息を吐いて、持ってきたコーヒーを臨也の頭へと落とした。


 一瞬にして意識を戻された臨也は、眉間をひくつかせながら波江を見上げる。熱いやら痛いやらで、逆に叫ぶ気にもならない。


「波江さん、俺が何かしたかな?」


「あんたがそこに居るだけで【何かした】ことになるのよ。鬱陶しいから出てくれないかしら」


 清々しいぐらいの毒を吐いて、波江は美しく嗤う。臨也は応えるように嗤いながら、椅子から立ち上がった。


「やれやれ、ここは俺の家なんだけど?」


「あら、そう。なら後片付け頼めるかしら。私はやることがあるから」


 持っていた御盆を臨也に押し付けて、波江は軽い足取りで部屋を出て行く。やることというのは、弟のストーカーだろう。飽きないなあ、と臨也が苦笑した時、波江が首だけ部屋に向ける。


「あんたも【やること】があるんじゃないかしら?」


 臨也が言い返すのを許さないように、波江の首は部屋から見えなくなった。
 ガシャ、と靴裏でカップの割れた音を聞きながら、臨也はまた咽喉を確かめる。自分から立ち上がるコーヒーの匂いは不快に感じるのに、この得体の知れない息苦しさは快い。



 【いらない】と言ったこの口は、どれだけ彼を傷つけたのか。その時、感情を無くしたように立ち竦む子供に、臨也は続ける言葉を失った。息が止まっているうちに、白いパーカーを翻して三好は消えた。



「愛するのは楽しいけど、愛されるって苦しいみたいだ」


 両手で咽喉を包み込んで、臨也は哄笑する。



―――ああ、ずっとこの苦しみの中に微睡んでいたいけど、俺もずっと苦しいのは御免だよ。


「割れたままのコーヒーカップ。染みと匂いの付いた衣服。全部元通りにはならない。そんな消耗品みたいな人間が好きで好きで好きで好きで堪らない!けれど、三好くん。君は継ぎ接ぎでも構わないほど愛おしい」


 逃げた白兎。狂ったアリスが捕まえるのは何時なのか。










 苦しいクルシイ狂おしいほどに、愛してる。


「ああ、運んで欲しいものがあるんだ。大事なスーツケースなんだけどね……」










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あとがき
前のさようなら池袋とリンクしてますかな?(笑)
臨也はどう思ってるか、みたいなのを書きたかったんですが意味が分からないヨ(´・ω・`)
ヨシヨシ一瞬しかでてないしorz
企画参加ありがとうございました、楽しかったです^^

企画サイト様always lover

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