スラムダンク
2 洋→←花
入った時のこのラーメン屋独特のくどい匂いは食欲を湧かすものでしかなかったけど今は気持ち悪くさせるものでしかない。
「あー食った!」
「ほんと。凄い食われました。」
「すまん!いやその!マジで奢るつもりだったんだってあの時は!しかし…」
「ははっ。うそうそ。気にすんなよ?バイト代入ったばっかだったしさ。でも30円しかもってないとかなんも買えないじゃん」
夜の少し冷えたこの外の空気が気持ちいい。花道といるこの空気が心地好い。
「あーあっ!なんかなぁー!」
「どうしたの?」
「オヤジから話聞いた時は本当に嬉しくて今すぐにでも行きてぇって思ったのによ。こうやって洋平と居ると行きたくねぇって思ってる」
「お前の夢なんだろ?別に一生会えなくなる訳じゃないし、休みの時は頑張ったら会えるじゃねーか。」
これは花道に言ってるのか俺自身に言い聞かせてるのか自分でもわからない。
「そーなんだけどよぉ…。洋平ぇ。電話しろよな!文通もしような!」
「なんだソレ。恋人じゃあるまいし。まぁ…するよ」
口を尖らせて話す花道につい笑ってしまう。同時にうらやましい。そんなにポンポン自分の考えが言えて。
「あと3日かぁ…」
「明日はまた部活に行くのか?」
「おぉ!明日で最後にする!なんか明日は久しぶりにゴリとかミッチーとか来るみてぇ。」
三年の冬に引退した花道は引退する時にはもうアメリカ行きが決まってたから英語以外勉強なんてしないで毎日部活に行っていた。引退したはずなのに。試合にはでないけどずっとアメリカに向けて体を動かさずにはいられなかったんだと思う。あと3日したら日本を離れるっていうのにまだ部活に行っていた。
「明日はわりぃけどバイトだから。…あと3日しかないんだからちゃんと用意しとけよ!?じゃ、ま「ぬぁああ!洋平!大変だ!」
近所迷惑なんてお構いなしの花道の馬鹿デカイ声が静かな町に響き渡る
「なに?」
「用意!全くしてねぇ!忘れてた!帰ったら英語ばっかやってて…気付いたら朝の繰り返しで」
「はぁ…どうせ持ってくもん少ないんだろ?チャッチャとやるぞ」
「さんきゅ!洋平」
こんな風に花道のお願いは昔から聞いてきた。誰よりも。でももうそれも出来なくなるから。いくらでもしてあげるよ。
笑う花道にこっちまで幸せになれる気がした。
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まえ*つぎ#
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