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小説
ちいさな音立てて軋む(チヨ→ユンマユ)
 

『明日、よかったら一緒にお出掛けしない?』



もし、あの日のマユ姉の何気ない誘いさえ断っていれば。
僕は、こんなにも苦しまずに済んだのかな?











+ ちいさな音立てて軋む +











1時43分。
遅れた。完全に遅刻だ。
こんなことなら髪を結うのなんてやめればよかったんだ。あぁもう、僕の馬鹿。せっかくマユ姉と出掛けるのに。

「ごめん、マユ姉。遅くなった」
待ち合わせ場所の喫茶店のテラスに駆け込むと、そこにはマユ姉ともう一人の姿が。

「おっせぇさー!もう待ちくたびれちまったさ」

まるで太陽みたいに。からからと眩しく笑うその人。
僕はなんだか鼻の奥が痛くなってそいつの名前が呼べなかった。

「もう…ユンちゃんやめなさい。大丈夫、チヨ?走ってきたの?」

優しく微笑むマユ姉とすら目を合わせられなくて僕は俯いたまま答える。

「うん…髪、結ってたら、時間が…」

何やってんだ僕は。
マユ姉の他に、もう一人も来ることは予想できた。だからって新しい髪留めを付けようと張り切るなんて。
それじゃあ、僕は。


「あれ、チヨ。お前そんな髪留め持ってたっけ」

どくり。
顔が熱くなった。

「本当。可愛いわねぇそれ。ね、ユンちゃんもそう思うでしょ?」

駄目だよマユ姉。そうやって、そうやって僕を気遣っちゃあ。
僕がユンタを好きだからって、ユンタは僕を好きじゃないんだから。
それじゃ僕は虚しいばっかりなんだから……!


「そうさねぇ、貝殻のも可愛いけど、それも似合ってるさぁ」



駄目、なのに。









「ごめん。僕、帰る」

僕は走り出した。
二人に背を向けて、制止の声も聞こえない振りをして。


ユンタの馬鹿。僕のことなんかほったらかしにしてくれればいいのに。
ユンタが好きなのは、僕じゃなくてマユ姉なのに。

だったらさっさとマユ姉と付き合って結婚しちゃえばいいのに。いつまでももたもたしてるからこうなるんだ。
あぁ、もう。駄目だ。


  
気がついたら僕は泣いてた。
じりじりする太陽の下をめちゃくちゃに走り回ってた。汗も涙もわからなくなるまで。

苦しいのも悲しいのも、わからなくなるまで。





ヒビが入った気がする。

綺麗な形の三角形に小さな歪みが、直せない歪みが生まれてしまった。





       … End







++++++

チヨ→ユンマユな三角関係!
この中で最終的に成立するカプはユンマユです。
報われないのはチヨ。でも彼女にとっても価値ある失恋になるはずです。最終的にゃハピエンドなんだよ。うん。

思春期チヨ15、6歳、一途ユンタ二十歳ちょい過ぎ、チヨ思いマユ姉28歳(公式)なやや年の差が好ましい(*´∀`*)



もう大好きだよ、沖縄組。

 

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