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小説
黄昏色に焦がれて(DD)
 
生まれてこのかた22年。俺は光を見たことがなかった。

生れつきの病気。極端に視力の弱い病。だから気付いた時にはバンダナで目を覆ったままの生活をしてた。
俺はそれでもいいと思ってた。手術にはどうしたって金がかかるし。成人したガキの為に、親に金出させるのも悪いと思ったから。


だけどそれは唐突に終わった。目隠し生活22年目の夏だ。

ある不良教師が、俺の人生を変えた。








 黄昏色に焦がれて








「お前ホントはそういう顔なのか」

おいオッサン。開口一番ソレかよ。フツー退院おめでとうとかだろ。それなりに大手術だったんだぞ。

明るい色の髪。あれはオレンジというイロだ。そのオレンジ色の髪が例の不良教師だ。
目の見えない俺をライブハウスまで拉致って、勝手に欠けたバンドメンバーの代役にしようとした男。(譜面が見えないんだから代理なんか務まるわけねぇっつの。)


「何見てんだよ、俺様に惚れたか」

「いや。こんな眉毛野郎だと思わなくて」

「てめぇ人の気にしてることを……」

なんとかっつー学校で英語教師をやってるらしいがきっと嘘だ。こんな先生は、嫌だ。



「にしてもお前変わったな。何だよその髪」

紫の、腰まで伸びた長い髪。そして頭のてっぺんに赤いメッシュ。
今までは染めてなかったから、親も最初はぎょっとしてた。(そう、目が見えないなら染める意味もなかったんだ。)


「うるせぇな……変かよ」

「変だろ。紫ってお前、ないだろ。しかもそのメッシュ、幅広すぎでもうトサカだろ」

「死にたいのかオッサン」


つくづく腹の立つ奴だ。





「でも、目ェ見えるようになってよかったろ?」

オッサンは夕焼け空を見上げた。


「この世はキレーなもんがたくさんあんだからよ」


空は夕焼け。
黄昏色とかいうらしい。紺と青と赤と明るいオレンジ。夜が昼を飲み込む瞬間のイロ。
奴のオレンジの髪が夕日を透かしてキラキラしてる。それは風になびいて金色にも見えた。

「そうだな。綺麗、かもな」

「…お前夕焼けぐらい素直に感動しろよ」

「うるせぇこの眉毛」

「てめっ……」






やっぱり思う。目が見えるようになってよかった。
世界がこんなにもイロとヒカリで溢れてたなんて、こんなにも魅力的だったなんて。


もし目が見えたら、そう思わせてくれたこの不良教師に、この時ばかりは感謝した。




… end









++++++

DD。どっちだろうね←
昔書いたDDの続きのような違う話。


目が見えなくてもいいのだと信じ込んでいたDに、手術を受けさせる決心をしたのがDTO先生。とかそんな設定。

 

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