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小説
2月13日、昼(六紫)
 





2月13日、昼






今日発つと伝えたら、紫の笑みがふと消えた。
かと思えばまた微笑みを作ってわかってるよと囁いた。

明日が何の日かはわかっている。わかっているからこそ、ここにいられないと思った。
明日のために帰ってきたのは事実だ。だがチョコレートを貰うために帰ってくるなんて男のすることじゃないと思い始めたのが昨晩。そして早々と発つことを決めたのが今朝だ。


「全くアンタは慌ただしいねェ」

呆れたような、しかし予想していたかのような言い方だった。
紫はわかっているのだろう。俺が迷いながら帰ってきたことも。そして今また迷っていることも。


「じゃあ、これ持ってきな。明日になってから開けるんだよ」

渡されたのは薄紅の和紙に包まれた小さな箱だった。そうか。やはり、わかっていたんだ。



「…悪いな」

「そう思うなら明日までいりゃあいいのさ。ま、別にいいんだけどさ」

紅を引いた唇が孤を描く。
そういえばいつもと口紅の色が違っている気がする。それを告げると紫の頬に仄かな赤みが差した。
春は、すぐそこまで来ているのかもしれない。






       … 終








++++++

幸せな六紫。
バレンタイン、の前日。

ちょっと残念だなーと思ってる紫さんと、それに甘える六さん。
こういう形の幸せ。

 


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あきゅろす。
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