be free
おつかい帰り。
夕飯の買い物を頼まれ、姉と二人でぱんぱんになったエコバッグをぶら下げて歩く。
ふと視線を感じた先、私は見慣れた顔と目が合った。
「あ、キャスバル」
律儀にも鳴き声を返してくれたその子は、この辺りに住み着いている野良猫。
どうもオスらしいので、そのハンサムさと毛色から私が勝手にキャスバルと名付けた。
(ちなみにキャスバルとはかの有名な初代ガンダムの人気キャラクター、シャア・アズナブルの本名である)
「また怪我してるなキャスバルめ」
キャスバルの尖った耳の片方に、赤く血が滲んでいる。
美形はやはり僻まれるのか、それともニュータイプとしての悲しき運命か(私はこちらだと信じたい)、彼は普段から生傷が絶えなかった。
「アムロにやられたか。ふふ」
労いの意を込めて背中を撫でてやると、それに応えるように再び小さく鳴くキャスバル。
人語の意味など知る由もないのだろうが、それでも何だか彼が私の馬鹿に付き合ってくれているような気がして少々嬉しくなる。
「遥希ー私もなでなでしてー」
こいつはもう私に構い過ぎてて逆にウザい。
「やだ。何で私がそんなこと」
「じゃあいいわよ。私が遥希をなでなでするから」
打開策としては全く訳が分からないものであるが、本人が納得しているのなら何も言うまい。
と言うより、もはや突っ込みたくもない。
私は溜め息を吐いて、伸ばされたその手を受け入れた。
姉の細い指が私の髪を撫でる。
まだ撫でる。撫でる。撫でる撫でる撫でる……
「しつこい!」
「キャスバル、貴方の輝く金髪も遥希にゃんのさらさらヘアーには敵わないわね」
姉はやけに自慢げに鼻息を荒くして言ってのける。
何故こんな事でキャスバルに対して優越感に浸っているのか、全くもって理解不能だ。
「だって私が毎日綺麗にブラッシングしてあげてるものね遥希にゃん」
「遥希にゃん言うな!」
姉をちらりと見やったキャスバルは、聞いたこともないような低い声で鳴く。
その表情は心なしか呆れているように見えた。
勝手ににゃんこ自慢!
(私は遥希のトップブリーダーといったところね)
(ねぇほんと、いい加減にして貰っていい?)
※遥希はガンプラとかも好きなタイプ。
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