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be free
イメチェン成功。

「ねぇ見て」


元来飽きっぽい私は今の髪型に二週間足らずで飽きてしまった。
だけどその二週間前、私が美容院でお願いしたのは縮毛矯正、一回20000円。決して安いものではない。

どう考えても今髪型を変えてしまうのはもったいなくて、仕方なしに私は自分で前髪を切るに至ったのだ。


「真っ直ぐ、初めて見た」


夜中突然思い立っての行動だったため、真っ先にお披露目したのは私の他に唯一起きていた姉だった。
彼女は柔らかく笑って、私を手招きする。


「そうだね。お姉ちゃんが来てからは、初めてかも」


僅かに頷いた姉は、歩み寄った私の額に手を伸ばす。

姉と私は血が繋がっていない。
彼女は父の再婚相手の娘として、私が20歳になったばかりの一年前、我が家にやって来た。


「最初逢った時なんて遥希、前髪の長さバラバラだったじゃない」
「…バラバラて。アシンメトリーと言って」


齢50を過ぎた肉親の再婚、そして現れた血の繋がらない姉妹。私はごく自然に、それを受け入れた。
もうそんなことで駄々をこねるような子供ではなかったし、父の幸せそうな顔が見れたのが嬉しかったから。

あぁそれと、もう一つ。


「変?自分的にはなかなかだと思うんだけど」
「うん、似合ってる」


切りたての前髪を確かめるように、彼女の細い指が撫でる。
それがするりと私の口元まで降りて来て、私はまんまと彼女に引き寄せられた。


「可愛い」


満足げに微笑んだかと思うと、そのまま吸いつくように唇を重ねてくる姉。
その先を急かすように服の隙間から忍び寄る指に気付かない振りをして、私はそっと瞳を閉じた。

そう、私は恋をしてしまっているのだ。
不揃いな前髪越しにそっと窺う私の瞳、それを一瞬にして釘付けにした彼女と、出逢った時から。




前髪




(ですが私もう寝ますの。離して下さる?)
(…いけず)








※姉からのモーションは失敗。

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