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be free
from.Haruki

仲のいい友人に彼氏が出来た。高校三年生の三学期だった。
同い年、本校男子クラスのイケメン君。
幸せそうに彼のことを話す友人。茶化しながらも祝福する、私含めたいつものメンバー。

こんなに近くで恋路を眺めていても、私にはまだ恋というものが理解できないでいた。


「遥希最高、あたしマジあんた大好きだわ」
「私もだよ」


この好きと、恋してる時の好き、何が違うんだろう。
だって私、この子達のこと大好きだよ。一緒にいたい。守りたい。幸せになって欲しい。

分からない。何が違う?


「いつか遥希にも分かるって」


大人びたとある友人は、寄り添いながら下校する二人の背中を見送る私に言った。
撫でられた頭が、何だか悔しさと切なさで熱くなった気がした。


しかしその三年後、私はほんの一瞬で、「あぁ、これが恋なんだ」と悟ることになる。




「…なぁに?」
「…バレンタイン、デー」


姉は私を見上げていた目を途端に丸くする。
無理もないが、その反応に私はますます恥ずかしくなってしまう。


「不要でしたら、受け取って下さらなくても結構ですわ」
「いや!駄目!頂戴!」


瞳を輝かせて差し出された両手に、そっと小さな箱を手渡す。


「…遥希のチョコ」
「…何」
「うぅん、嬉しくて」


受け取ったそれを愛おしむように眺める姉。その頬は、僅かに赤い。
何だかとてもむず痒くて、彼女から目を逸らしつつ腰を下ろした。


「ありがとう、大事にするね」
「え?食べてよ?」
「うん、大事に食べる」


彼女の口調がほんの少しだけ子供っぽくなっている。
甘えたモードに突入した合図だ。我が姉ながら仕方のない奴。


「にやにやしちゃって」
「だって、ね」


姉は一気に距離を縮めて、私の胸にすり寄ってくる。
出血大サービスだとばかりに頭を撫でてやると、幸せそうな笑い声を漏らした。


「嬉しいの、すっごく」
「うん、そうみたいね」


包みに口付けて、もう片方の手で姉は私の服をきゅっと握り締める。


「大好きよ、遥希」


その時ふと、高校時代を思い出した。
あのメンバーに抱いた感情や、掛けられた言葉をごく鮮明に。
懐かしさに少し口元を緩めてから、私は姉の額にキスをくれてやった。


「私もだよ」


彼女の笑顔を見るたび実感する。
恋というもの、そしてその甘美さと切なさと幸福感、を。




ハッピーバレンタインデー、妹馬鹿な貴女へ。








※国中が甘さに包まれるこの日なら、少しぐらい便乗してあげてもいい。

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あきゅろす。
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