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be free
小さな口喧嘩。

姉と二人でくつろぐ中に鳴り響く特撮ヒーローのテーマソング。
昔小さな私と見に行ったヒーローショーにて、敵に捕まってステージ上でまごついていた父からのメール着信音だ。


「お義父さん何て?」
「んー…」


いい歳してふざけたメールがお得意な父は、今日も絵文字をふんだんに使用していた。


「今日の外食、中華かイタリアンか二人で決めて60秒以内に父ちゃんに返事!カモン!…だって」


文末のウインク絵文字が神経を逆撫でする。
がしかし、せっかくの外食とあらばこちらもきちんと返信してやらねばなるまい。


「…うーん…中華」
「え?イタリアンでしょ」


相談も待たず自分一人で結論付けようとした上、私と希望が食い違う姉。
すぐに挙げた反対意見にむっとした表情を見せた姉を睨み返してやる。


「中華。北京ダック食べたい」
「馬鹿姉。パスタとピザの黄金コンビをここで逃がす気?」


埒が開かないとみて勝手に返信してしまおうとした私に、姉は負けじと自分の携帯から反論メールを送信した。


「あっ馬鹿ずるい!」
「ずるいのはどっちよ!」


遥希の食いしん坊!と頬を膨らませた姉に私は愛用のクッションを投げつけた。
こうなったら直談判だ。クッションで怯ませた隙にリビングへ向かうべく素早く立ち上がる。


「待ちなさい遥希!ノーパンってことバラすわよ!」


不覚にも膝をついてしまう。あぁ、顔から火が吹き出しそうだ。

お恥ずかしい話ではあるが、私はつい一時間程前に姉に食われたばかり。
汗冷え防止と突然の両親登場に備えるため、情事後は部屋着だけささっと着てしまうことが多かった。
今日はまさにそれなのだ。スウェットの下には、私は何も身に着けていない。


「最低!変態!変態!」
「ふふん、本当のことでしょ!」
「おぉーい」


言い争いの中、呑気に割り込んできた声。
階段の下から父が私達を呼んでいるのだ。
二人してここぞとばかりに部屋を飛び出す。


「お父さん!私イタリアンがいい!」
「やぁよお義父さん、中華がいいわ!」


すっかり身なりを整えた父は、髭を剃ったばかりなのであろう顎の辺りをしきりに撫でながら言った。


「うん、絶対収集つかなくなるだろうと思ったから、やっぱり今日は回転寿司でーす」


拍手をしたり万歳をしたり、ひとしきり自分一人だけで盛り上がってみせた父は、私達に準備をするよう促しながらリビングへと消えた。




喧嘩両成敗?




「んぅ…あぁぁ…素直に喜べない」
「えぇ…何か納得いかないわ」


がっくりとしなだれ掛かってきた姉の頭を、私は慰めるようにぽんぽんと軽く叩いてやった。








※古瀬戸陽一朗、再び。

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あきゅろす。
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