雨に濡れた私はくしゃみを一つ
朝食すら食い逃すのに天気予報なんて確認する暇あるわけないじゃないか!
部屋に置き去りにされた水玉の折り畳み傘G
教室の窓から見えるのは止む気配を見せない土砂降りの雨に嫌がらせのごとく傘を広げて帰ってゆく生徒達。うわ、あっちのカップルなんて手に傘がある癖して相合い傘してやがる。その縞馬模様の傘私によこせよまじで。
さて、私はどうしようか。
傘を忘れたからこのまま雨に濡れて帰る事にはなるのだけど、今日は朝から少し涼しかったからセーターを着てる為透ける心配は要らない。化粧だってファンデーションからマスカラまでウォータープルーフの為に崩れない自信がある。
(でも……)
私は雨があまり好きではない。というか嫌いという表現に近い。
とくにトラウマが有るというわけではないけど、濡れたら服が肌に張り付くし雨は冷たくて体が冷える。で、最終的に風邪を引く。それに雨の日に持ち歩く傘が嫌いだ。邪魔だけど手にずっと持っていなければ濡れてしまう。店に入れば使いもしない物を手に持って歩く羽目になる。必要不可欠な邪魔者。
そんな必要不可欠な邪魔者をげた箱付近の傘立てに余っていたらパクってしまおうか。なんて邪な考えを持ちながら人のいなくなった校内を通ってげた箱で靴に履き替える。
傘立てにビニ傘が無いわけではないけれども明らかに穴の開いた物と骨がボッキボキに折れて広げることさえ無理そうな傘達。
なんというか、自分のついてなさにため息がでる。
「りーおーちゃんっ」
あああ、神様仏様お姉様。私は何か悪いことをいたしましたでしょうか。入り口の前にイケメン優男の顔した変態が見えるのは幻でしょうか。むしろ幻であれ夢であれ。
「遅かったねー莉央ちゃんの靴がまだあったから待ってたんだ。あれ、莉央ちゃんの傘は?」
変態似非優男がニコニコと嬉しそうに人の良い笑みを浮かべながら私の前まで来た。
「…………ない」
「じゃあ、一緒はいろう? 最初からそのつもりだったけど、ちゃんと家まで送るからさ」
「…………」
まじでか! 超ラッキーじゃんか、三日月雅雪様々だね! 仕方がないから二人仲良く肩を並べて帰ってあげる。
「なんて言うかボケぇ!」
「うん?」
お前と一緒に相合い傘するぐらいなら濡れて帰ったほうが幾千倍も増しだぜコンチクショーウ!
私は目の前の変態似非優男を押しのけてさっきよりも勢いを増した雨を降らす真っ黒な雨雲の下を走った。
雨に濡れた私はくしゃみを一つ
(傘をさす彼は笑みを浮かべているのだろう)10.2.16
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