毒を吐いて照れを隠す彼女


 最後の一本を見つけたのは私だけじゃなかったらしい。
 つか、お前実はリアルにストーカーだろこの変態野郎!


学校内に咲き誇る桜F


 お昼休み、私は三回も忘れていないか確認したお弁当の入っているスクールバックを持ち体育館裏に落ち着いた。

 四月下旬、殆どの桜は満開を終え葉の出始めるこの時期。偶々見つけた体育館裏の桜だけは今満開を迎えている。
 この桜は他の染井吉野とは違い花びらの枚数が多く、先に向かい赤みがかっている。八重紫桜と言うらしい。花びらの枚数が多い分、体育館裏には一本しか植わっていないにも関わらず桜自体に迫力があるし落ちてくる花びらも多く、そのためか地面は桜の絨毯になりかけている。
 自分の来た道に背を向ける形で桜の木に寄りかかりながら座り食料を取り出す。

「いただきます」

 弁当の蓋を開けて一応挨拶をした。というか習慣が着いているため言わないと気持ちが悪いのだ。
 お腹すいたお腹すいたお腹すいた。他の女の子達よりも少し大きめだろうお弁当の中身をハグハグと口に詰め込む。

「その春巻き美味しそう。一つちょうだい?」

「嫌」

「じゃあ玉子焼きが食べたいな」
「………………」

 私は一人でここに来て一人で食事をしていたはずなのに、誰と会話しているのだろうか? いや、声からしてアイツだと言うことは解るのだが理解不能だ。

 ギギギ、と音が付きそうな動作で斜め上を振り返れば桜の木の裏から覗き込んでいたドM変態馬鹿似非優男の野郎が私の真横に腰を下ろす。

「お昼一緒に食べよう?」

「嫌だ。帰れ……って下さい」

 危ない。イラつきのあまり思わず取って付けたような敬語になってしまった。この人は変態でもドMでも見た目だけは色白イケメン優男の思考回路馬鹿でも一応先輩なのだ。一応。

「桜、綺麗だねー」

「貴方が居なければもっと綺麗です」

「ふふっ、貴方って言うとなんか夫婦みたいだね」

「きっキモイ!」

「お弁当交換しない?」

 電波な変態優男を無視してガツガツと弁当を減らしていく。……早く食べて教室に戻るために。

「やっぱ夫婦と言えば愛妻弁当だもんね」

「…………あの、」

 私は手を止めて俯きながら怒りをぶつける。

「うん?」

「五回ぐらい三途の川でも黄泉の国でも渡って来てくれます?」

毒を吐いて照れを隠す彼女

(それが可愛くてまた笑う俺)
10.02.03


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あきゅろす。
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